(今回は単なるストーリー検証になった結果、とても長くなってしまいました。お詫び申し上げます。) 冒頭、仲間の臭いをかぎつけたメリーが倒木に乗って鳴き始めるところから、物語は動きはじめます。その倒木の形から、ポールがカーゴの発射台を思いつくのはちょっと都合よすぎるのですが、まぁ仕方ないですね。
ところが、せっかくの設備も、貨物用のカーゴでは人を運ぶことはできません。ここでカチュアがいいアイデアを出します。確かにシャトルなら気密性も十分だし、大丈夫かもしれない。でも、翼が片方だけではバランスが、と気にするフレッドの言葉を聞いてマキがさらにいいアイデアを出します。それなら、いっそのこと両方の翼を取ってしまえばいいじゃない!!
こうして、この荒唐無稽の計画(実は大気圏突入の時ほどおかしくはないのですが)は、さっそく実行されることになります。もう、これしか手段はないのです。
ロディたちはシャトルの運搬作業に向かい、スコットとフレッドは、チェンバー夫妻や留守番と一緒に、トレーラーの電源を発射施設に接続する作業をはじめます。そしてケンツは、しょぼんと施設の前に佇んでいます。
思うように動かない台車を前に、スコットたちは悪戦苦闘します。ここでリグレーは、ポールに邪魔をしないでというモーションをかけます。それに気づいたポールは仕方なく表へ出て、ケンツの横に座ります。
ポールはケンツの食べているパンを勝手にちぎって食べながら、「過ぎたことは忘れろ」とケンツ(と自分)に言い聞かせます。ポールがパンにつけてくれたリグレー特製のジャムで、ケンツは元気を取り戻します。レッドベアーの旗のことを聞かれて答えるケンツの声には、次第に元の張りが戻ってきます。
(余談ですが、このシーンにはほとんどBGMがかかりません。「13」になって久しぶりに登場する「静けさ」が印象的です。)
ようやく正常に動いた台車を前に、ケンツが試運転しようと提案します。今度ばかりはいいアイデアだとスコットたちも認め、かくして、カーゴを積んだ台車は、軌条に乗せられます。台車とカーゴは正常に作動し、試運転は成功しました。喜ぶ子供たち。役目を終えた台車は、地上へと落下していきます…
一方のロディたちは、慎重にシャトルの残った方の翼を切断しています。この時、カチュアについてきたジミーから、メリーが逃げ出します。彼女は遠くに自分たちの仲間=ククトヤギの群れを見つけて、そこに向かったのです。追いかけるジミー。それに気づいたカチュアも後を追います。
ところが、そこに2機のジャーゴが攻撃をかけてきます。そこにロディとバーツが駆けつけ、戦闘が始まります。ここでマキとシャロンがトラックで二人の救出に向かいますが、至近弾を受けてトラックは横転してしまいます。マキたちがカチュアとジミーに助けられたのも束の間、背後からククト兵に銃を突きつけられてしまいます。
その様子を見たロディたちは、やむなく武装解除に応じます。…と、その時、先の台車がジャーゴの背後に落下して爆発します。驚くジャーゴの隙を突いて、ロディたちは再びライフルを取り、ジャーゴを撃破します。また、爆発に驚いたククトヤギの群れが走り出し、ククト兵とマキたちを引き離します。こうしてマキたちも危機を脱したのです。しかし、群れの中にメリーを見つけたジミーは、勇躍崖からジャンプして、メリーの背中にしがみつきます。
向こうに見える、何事もなかったように草をはむククトヤギの群れ。メリーはジミーに何かを訴えるように、鳴き続けます。ついにジミーは「メリー、わかったよ」とつぶやいて、メリーの首縄を解いてあげます。そして、動こうとしないメリーに「かえるんだ!」と、縄を地面に打ちつけます。
仲間たちのもとへと走ってゆくメリーの姿を見守るジミー。カチュアたちはそんなジミーを思いやって次々に声をかけますが、ジミーは健気にそれに答えます。そんな中、マキが「(みんなのもとへ)急ごう」と声をかけ、全てを理解した子供たちは、ジミーを残して立ち去ります。
ここで、ジミーは初めて涙を見せるのでした…誰も見ていないのに、帽子で顔を隠しながら。そして、おそらく、マキのあたたかさに感謝しながら。
再び合流した子供たちは、互いの状況を知りました。ケンツは、一人離れて夕日に向かうジミーを、じっと見つめます。そして、ジミーに走りよって、(ポールと分けあった)パンを彼に差し出します。ケンツは、いかにも彼らしいやり方で、はじめてジミーの心の支えとなってあげることができたのです。
もう、お気づきのことだと思いますが、スタッフは、ジミーとメリーの別れの場面に誰が必要かを考えて、ロディたちに同行する子供たちを決めたのでしょう。カチュアは当然として、それ以上に、ああして場面を締めくくれるのはマキしかいないことを、スタッフは充分認識していたのでしょう。
では、どうしてシャロンが一緒にいたのでしょう。おそらく、ポールとケンツの会話を成立させるためではないでしょうか。彼女もケンツのことを心配しているのですが(ケンツをいったん二等兵に格下げしながら、しっかり軍曹に復帰させるぐらいですから)、あの二人の会話の場に彼女が顔を出すと、場を壊しかねないのです。次第に心を通わせる二人を描写するためには、シャロンにはちょっと席を外してもらう必要があったのかもしれません。
今回はこれらの事を確認したくなって、ストーリーを執拗に追ってみました。皆さんは、如何感じられたでしょう。
マキたちは一瞬ククト軍の捕虜になりますが、子供たちがこのような形で銃口を向けられるのは、始めてのことです。一瞬腰を抜かすジミーとシャロンが、実にリアルです。
ところで、前回捕らえられたククト兵がこんな形で活躍することになるとは、ちょっと予想できませんでした。まだ、数人が生き残っていますが、彼らがもう一度活躍する機会があるのでしょうか。実は、今、あるいやな予感が私を襲っています。最後に血は見たくないのですが…
なお、あの発射設備ですが、助走路が極端に短いことを別にすれば、十分に現実的な設備です。実際、あれそっくりの設備を作って人工衛星を打ち上げようという計画が、いくつかあります。もっとも、その時の動力は、科学燃料ではなくて超伝導なのですが。しかし、「台車」という表現は、もう少しなんとかならなかったものでしょうか。
早いもので、「13」の物語もあと1回を残すだけとなりました。
子供たちがジェイナスに戻るには、まだまだ越えねばならない難関が多数残っています。もちろん、最終的にどんな結論が待っているかは、誰もが知っていることです。でも、私が見たいのは、その結論ではなく、子供たちがどのようにそこにいたるかという道筋なのです。
今、子供たちは自らの手で未来を切り拓こうとしています。私は、その可能性に賭けようと思います。
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