「(前略)…あれは、39年前のことだ。」

「(スコット)39年前…。」
(ケンツ、たまらず横を向く)

「(アランの写真を手にしながら)そう、第一次学術調査団の船がこの宙域にたどり着いたとき、隕石事故で難破したんじゃ。(回想シーンが続く)奇跡的に生き延びたワシは、ククトの船に救助された。当時このタウト星は緑を再生させる実験が行われており、ワシを助けてくれたのはその研究チームだった。ワシが地球の植物学者と知った研究所の所長は、研究チームに加えてくれた。やがて生物の研究にやってきたリグレーと出会ったんだ。そして、ワシらは結ばれ、待ち望んだ一人息子アランに恵まれたのだ。」

「(スコット)地球人とククトニアンの間に生まれた、最初の子供?」

「そうかもしれん。(語るポール)それでも、研究書の誰もが祝福してくれ、アランはみんなのマスコットのように育っていった。今は見る影もないが、あれがその研究所じゃ。(聞き入るケンツたち)ワシらは、着々と研究成果をあげながら、平和で幸せな日々を送っとった。アランが5歳になるまでは。」

「(幼いアラン)パパ、ママ、兵隊さんだ! 兵隊さんが来たよ! いっぱい来たよ!」
(ハイライトの中、閉まる門のシルエット)

「(語るポール)ある日突然、研究所は軍によって閉鎖され、ワシら全員がククトの中央研究所に移された。ここでの目覚ましい研究成果を知った上層部が、いち早く軍事利用することを考えたのだ。それは研究者の自由を奪うだけではなく、ワシら家族の運命も大きく変えていった。」

「(イメージシーン)さらに、地球からの本格的な植民船の進出は、ククト側から見れば明らかな侵略行為となり、緊迫した状態になっていった。(投石を受けるアランの姿)地球人に対する憎しみは、ワシらの家族にも向けられた。当然アランにもな。(アランのイメージシーンが続く)」

「(少年のアラン)なぜ、なぜ僕を産んだんだ!! 生まれてこなきゃよかった!」

「アランは、悩み苦しんだ。アラン、強くなれ。そして、地球人とククト人の平和の架け橋となってくれ。ワシたちがアランに重すぎる理想の荷物をしょわせたことに気づいたのは、彼が16歳で家出をした後だった。やがて地球とククトの情勢も悪化を辿り、敵国人のワシとスパイ容疑の妻は逃亡者となった。」

「(ケンツがたまらず叫ぶ)いいかげんにしてくれよ!!」
「(驚くポールとリグレー)へっ?」
「あんたたちの昔話なんて、どうだっていいんだよ!」
「(スコット、つぶやく)ケンツ…」
「(ケンツが続ける)オレたちは、おふくろやおやじにあいてぇ。何がなんでもあいてえんだよ!」

「(ポール、思い出したように)アランもそう言ってくれたよ。」
(息を飲むケンツたち)

「ワシらがククト星を脱出した後、アランはワシらを探し出し、会いに来てくれた。18歳の時だ。」

「(ロディ)無事だったんですね。」

「アランは、地球人もククト人もないと言った。」
(聞き入る女の子たち。カチュア、そっと手を合わせる。それを横目で見るマキ)

「(シルエットによるイメージシーン、アランが話す)僕にとって、父さんも母さんもかけがえのない大切な人なんだ。平和になるまで、僕の生まれた故郷、タウト星で一緒に暮らしたいんだよ。」

「(ポールの横顔、やや涙声で)うれしかったなぁ。だが、それがアランの最後の言葉になった。アランはワシらを狙ってきた連中と、ワシらを守って戦った。そして…」

「(スコット)犠牲に…」

(後略)