Primary Choice
「ぼくはくま」
(06年10/11月放送)

かわいい熊が自分の思いを綴る、ファンタジーソング。「世界の宇多田」がこの番組に、という驚きもさることながら、普段の彼女からは想像もつかない素朴なテイストの歌が、番組の雰囲気にぴったり。のんびり聞いているとさりげなく変拍子があって、はっとする一瞬がいいアクセントになっている。キーボードの音色など、シンプルながら味わいのある伴奏もよい。若手立体アニメーター合田経郎の映像も、普段の彼とはちがう優しいムードが好印象。実は熊は…という作品の仕掛けがなかなか分からないのが難点だが、それを差し引いても、作品の完成度・人気共に番組を代表する作品の一つだろう。

Secondary Choice
「私と小鳥と鈴と」
(06年12/1月放送)

明治を代表する女性詩人金子みすゞの詩をもとに、人の個性の大切さを伝える作品。選び抜かれた言葉のイメージを素直な旋律で表現した豊かな音楽性が、この曲の最大の持ち味。これを男性が歌うというちょっとした意外性が、むしろこの曲の魅力を引き立てていてすばらしい。新垣勉という人物の事情を抜きにして、伴奏の児童合唱ともどもいい演奏。また、この手の作品には欠かせない南家こうじのアニメーションが、曲と見事なシンクロを見せているのも見事。派手さはないものの、これぞ「みんなのうた」という風格が感じられる名作。

--Musical Piece--

• 私と小鳥と鈴と
• これってホメことば?

シンプルさの中に明るい力強さが感じられる「私と…」は、番組にふさわしい、まさに本格派の作品。その対極ともいえる「ホメことば」の問答無用の楽しさも捨てがたい。この他にも名曲が多かったですね。

--Performance--

• ぼくはくま
• 私と小鳥と鈴と

「ぼくはくま」で見せる宇多田のちょっとハスキーな歌声が、ここまでファンシーに感じられるのは、少々意外かも。伴奏も的確。「私と…」では、新垣の朗々とした歌声が心に響く。

--Picuture--

• いらっしゃい
• ぼくはくま

「いらっしゃい」でのシンプルさの向こうにある余白の美が、楽曲とベストマッチ。「ぼくはくま」は精緻な映像に乗せたコミカルな雰囲気がすばらしい。この2作を含め、立体系が多いのが今年度の特徴。

--Current Topic--

• ぼくはくま
• みんなのうみ

あの宇多田が子供向け作品という驚きは、インパクト十分。名曲が生まれてさらにびっくり。TUBEが♪うみはひろいな…と歌ったのも驚異的。この他、さだまさしの登場など、今年は話題性ありすぎ(笑)。

--Rebroadcast on TV--

• 誰も知らない
• 笑顔

懐かしい作品が並ぶ中、やはり「誰も知らない」の映像発掘は、番組にとって大ニュースでしょう。最近のヒューマニズム作品のさきがけとなった「笑顔」の放送は嬉しい。再放送は延べ22曲でした。

--2006 short Review--

06年度は、多くのビッグネームが番組に登場した点に最大の特徴があるでしょう。年度を通して楽曲の出来映えの差が大きかったのですが、(最近のトレンドとは異なる)素直な作りの曲に名作が多数生まれ、結果的に番組にとっては実り豊かな1年でした。この動きがどうなるか、07年度に注目。新曲は18曲でした。