Primary Choice
「WINNER」
(07年10/11月放送)

走るのがちょっぴり苦手な男の子が、気になるあの子の一言に勇気づけられて、つまずいても転んでもひたすらグラウンドを駆け抜けていく、という単純明快な作品。広義の季節ソングだが、どこにでもありそうな風景に寄せて描かれる男の子の素朴な恋心がまぶしく、こちらまでついつい声援を送ってしまう…曲に込められたメッセージを感じながら。余計な細工を極力排した編曲と、RYTHEMのストレートな歌唱も心地よい。こうした楽曲の雰囲気を上手く汲み取った青木純のアニメが、音楽と真っ向勝負でこちらもすばらしい(さりげなく作家の思い出が映像にちりばめられているお遊びも楽しい)。これぞみんなのうた、とでもいうべき、まさに「直球勝負(NHK公式サイト)」の名作。

Secondary Choice
「おはようのうた」
(07年8/9月放送)

朝、おはようっていうときの風景を、シンプルに描いた作品。厳選された言葉で能弁に綴られる歌詞は、「おはよう」の本質を鋭く表現しており、とても印象的。わずか8小節という近年まれに見る短いメロディーは、かつての谷山浩子作品を彷彿とさせるが、シンプルであるが故にむしろ味わい深い。伴奏のリコーダーアンサンブル(どうやらセミプロが演奏したようです)の独特の雰囲気も絶品。太田大八の絵をそのまま映像にしたのは最近では珍しいが、要所で原色をふんだんに用いた力強さが、とても心地よい。こちらもこれぞみんなのうた、と思わせてくれる愛らしい一品。

--Musical Piece--

• WINNER
• しあわせだいふく

歌詞・音楽どれもが直球勝負の「WINNER」は、テーマともども、文句なしの一等賞! 久々の純粋な食べ物ソングとなった「しあわせだいふく」のもちもち感覚も捨てがたい。シンプルな名曲が目立ちました。

--Performance--

• のびろのびろだいすきな木
• おはようのうた

意外と洒落たしあがりになった「のびろのびろ…」と、シンプルだからこそ面白い「おはようのうた」。ずば抜けて名作ではないけど、いずれも曲想とマッチした演奏で、楽しませてもらえました。

--Picuture--

• ハーイ! グラスホッパー
• WINNER

最高のアニメにのっぽさんのタップダンスまで披露された「…グラスホッパー」はお見事。音楽に真っ向勝負の「WINNER」の、こっそり描かれる遊び心が楽しさ満点。ハイレベルで様々な技法の力作が並んだ。

--Current Topic--

• おしりかじり虫
• MOTTAINAI

明らかにNHKが狙ってきたとしか思えないこの2曲、それがここまで当たってしまうとは、番組スタッフですら考えていなかったかも。よくも悪くも、現在の「みんなのうた」の姿を映し出した作品でした。

--Rebroadcast on TV--

• 以心伝心しよう
• パンのマーチ

痛ましい事件が続く中、永遠の名曲が心にしみる。60年代の作品がTV本放送で流れたのは、1980年以降では初めて。TVでの再放送曲はのべ24曲でした。なお「おしりかじり虫」は正規の再放送枠での放送なし。

--2007 short Review--

07年度は、current topicでも述べた通り、制作スタッフが「狙った」作品が続出し、大きな成果を収めました。でも、個人的に印象に残るのは、番組本来の良さを残した作品。シンプルで素直な曲こそ、実は新鮮に聞こえるのかもしれません。他とは少しだけ違う味わいが、この番組の魅力です。新曲は19曲でした。