Primary Choice
「りんごの木の下で」
(99年12/1月放送)

南こうせつとイルカという、意外にも初顔合わせとなった実力派シンガーのユニットで歌われる、一種の人生賛歌。ロングバージョンならではの緩やかな曲想にのって、肩に力の入らないごく自然な言葉が、私達の心を癒してくれる。多彩な民俗楽器に彩られた伴奏も巧みで、番組らしいヒーリングソングに仕上がっている。久々に登場の福島治のアニメーションも、多様な技法を駆使しつつ、独自の世界を描いている。

Secondary Choice
「はみがき」
(99年6/7月放送)

世界でもっとも有名な日本のロックバンドの一つ・少年ナイフが、文字どおり番組に殴り込みをかけた作品。「歯を磨こう」という単純なメッセージを見事に料理したうえで、子供向け楽曲であるが故に全く手を抜かず、きちんと少年ナイフの世界を作り上げた点が秀逸。理屈抜きに楽しめる佳作。TiM CARROLL-KCOOKのCGは、一見チープな作りながら、当時としては斬新なテクニックが冴え、見応え十分。

--Musical Piece--

• りんごの木の下で
• 歩いてみっか!

エスニックな響きと緩やかな曲想で、ヒーリングソングの模範を示した「りんごの…」は文句なしの名作。「歩いてみっか!」では、単純明解な発想と、誰にでも歌えるテンポ感あふれる旋律が魅力的。こういう単純な名曲は貴重。

--Performance--

• はみがき
• りんごの木の下で

少年ナイフの演奏は見事なまでにロックしていて、「みんなのうた」で流れるのがもったいないぐらいの名演。日本のトップアーティスト2名の競演に巧みな伴奏も加わって、「りんごの…」も聞き飽きない。

--Picuture--

• だけど I LOVE YOU
• 大きな月

今年度は映像に名作が目白押し。なかでも「だけど…」が見せる失恋の悲しみの昇華は、そのやるせなさのシンボリックな表現が絶品。「大きな月」で久々に登場の影絵は、まさに藤城マジックの世界。叙情性あふれる映像美を堪能したい。

--Current Topic--

• まひるのほし
• 赤い自転車

知的障害者中心のバンドを紹介するというだけでも画期的だが、その曲が素朴な力強さにあふれる名曲だった点でも、「まひるのほし」放送は快挙。「赤い自転車」でまだインディーズ時代の花＊花を登場させたNHKの慧眼ぶりはさすが。

--Rebroadcast on TV--

• ちいさい秋見つけた
• メッセージソング

季節ソングのスタンダードの再放送が相次いだ年度だったが、とりわけ「ちいさい秋…」に思いを寄せる人は多かったのでは。一方、新しい季節ソングとしての「メッセージソング」の紹介も嬉しいところ。
再放送は延べ21曲でした。

--1999 short Review--

99年度は、ロングバージョンを中心に緩やかなテンポの作品が多かったように思えます。社会全体が癒しを求める中、番組も微妙な舵取りを迫られたのでしょうか。一方で「はみがき」に代表される元気印の曲が健在な点も、高く評価されるべきでしょう。
新曲は19曲でした。