東京に転居してからは、毎年春に開催される「東京国際アニメフェア」に行くようにしています。グッズ販売やコスプレに走るブースはそれなりに楽しいですが、それは大して重要ではありません。制作スタジオのブースに行くと、時々実際に作品作りに携わっている方とお話しできるチャンスがあり、それが楽しみです。
私達一般の市民がアニメの制作スタッフと直に会話できる場所なんてほとんどありません。せっかくの機会なので、私が楽しめた作品を作ったスタジオにお邪魔して「この作品はよかったです。次もぜひ頑張ってください」などと声をかけると、スタッフの方のほうからいろいろと情報を教えてくれます。アニメ制作もモノ作りなのですが、その視点から会話できる機会はあちらさんも意外と少ないようで、こちらがそうした視点を提供すると、「そんな話をされても一介のファンには分かりません」みたいな話題までどんどん話してくれます。それを紹介することができないのは、当たり前とはいえ、少々もったいない気もします。

さて、あるブースで担当の方と話し込んでいると、いつしか「あずきちゃん」の話題になっていました。私がDVD-Boxを買ったものの、うかつにも１枚割ってしまった、今では中古市場で14万円ほどもするんですよなんて話をしていると、その方が突然話題を振ってこられました。
「実は、あずきちゃんのDVDは、もう一度発売される計画があるんですよ」
「え?」
「初回と同じ形式なので、デジタルリマスターなんかはしないため、画質はあまりよくありませんが、発売に向けて動き出しています。A社からB社に企画が流れていて、B社側のご了解はいただいています。販売についてはC社が興味を示してくれています。採算が大きな問題の一つではありますが、なんとか発売できるようスタッフが努力しています。おそらくこの夏にも何らかの発表ができるはずです」
「…!!!」
私がアニメフェアの会場で絶句したのは、これが初めてでした。おそらく、コンマ何秒かの間、私はリアクションをすることすら忘れて、呆然と立ち尽くしていたに違いありません。全身に震えが走りました。それでも、すぐに私は猛然と話し始めました(笑)…
「ありがとうございます。必ず買います。1セットはもちろん、2セット買ってもいい。いや、販売数が不安なら3セット買ってもいいですよ!!」

お話しいただいた方にご迷惑をおかけするわけにはいきません。でも、この話題はさすがに放っておけません。なので、おそらくここまでなら問題ないだろうという範囲で紹介だけしておきます。
もしこの方から私宛にメールが届いて「おかげで迷惑がかかってしまった」と書かれてあったら、私は再発売のDVDを５セットは買い上げることで、せめてもの罪滅ぼしをしたいと思います。
それにしても、この作品ほど商業ベースに乗せることが難しい名作アニメは、少ないでしょう。基本的にマイナーだから販売数はそれほど見込めない、しかも117話もあるので、どうしても高額な商品になってしまう(から、さらに販売数が落ちてしまう)。そうした悪条件の中で、それでもこの作品をもう一度世に送り出そうと、懸命に努力をしてくれている方々に、筆者は心から敬意を表するとともに、精一杯のエールを送ります。
いわゆる「大人の事情」に対して私達が不平不満を述べるのは簡単なことです。でも、それを言っているだけでは物事は決して前には進みません。それに、あずきちゃんのキャラクターの中で「大人の事情」に文句を言うような奴は決して出てきません。そういう作品だからこそあずきちゃんはすばらしいのですから、私もそれを見習いたいと思います。
世の中の仕組みの中で、どうすればこの作品がもう一度表舞台に出ることができるか、ささやかながらこのサイトがお役に立つことがあれば幸いです。