39話を細かく見ると…

歩哨当番の合間にスコットとクレアの様子を覗き見していたバーツは、クレアがトレーラーの方に向かうのを見て、ロディともども驚きます。クレアが潔癖症であることは二人とも承知しているので、スコットの鞄の中身を彼女が見たらどんなことになるのか、容易に想像がつくのです。
それはスコットにとっても同じこと。ようやく自分の犯した失敗に気づいたスコットは慌てふためいてトレーラーに向かいますが、既に手遅れであったことを悟る結果に終わります。しまった、と頭をかくスコット。昼間の事件（倒れたクレアを見つけたスコットが、心配して彼女の胸元に手を入れた）も下心があったのね、と完全に誤解するクレア。一方のバーツ達は、この時点では状況を完全には把握できませんでした。
食事に戻ってきたクレアの所作がいかに的確な描写であったか、いうまでもないと思います。その様子を見て、彼女に一体何があったのだろうと心配したマキが、夜になってバーツ達に相談を持ちかけることで、物語は大きく動きます。
事の次第を知って、思わず立ち上がり「げっ!」と声を揃えてしまうロディとバーツ。何も知らないマキに対して、自然に振る舞おうと懸命な二人の動作は、マキの無邪気な表情とも相まって実に愉快です。マキが相談を持ちかけた相手が実は事件の発端を握っていたなんて、バーツの口からは絶対に言えないことでした。だからこそ彼は、「もう帰って、あったかくして、寝な。」と優しく言葉をかけ、マキもそんなバーツを信頼してキャンプへと戻ったのです。後に残ったロディとバーツは、えらいことになったと気をもみます。でも、ここで行動に移るのはバーツの方で、ロディはどう対応すべきか、考えあぐねています(二人の処世術の差ですね)。
夜も更けて、スコットはエロ本をこれが最後と見つめながら、残念そうに火にくべています。そこにどこからともなく登場するクレア。「こんな夜更けにたき火？」と皮肉たっぷりに声をかけられて、スコットは慌てふためきますが、これは21話と全く同じ状況ですね。クレアはスコットのそんな様子に一層幻滅したようで、厳しい言葉を投げつけます。ここでスコットは意外にも真摯な態度を見せますが、そんな彼の姿にクレアはいたたまれなくなってしまいます。この様子を途中から見守っていたバーツは、ようやく事の真相を知ります。「ここまでこじれているとは」と頭を抱えながらも、クレアの方へと歩いていきます。
バーツはスコットに無理やりあの本を預かってもらったのは自分達だと話すのですが、動転しているクレアには、バーツの言葉を信じる余裕などはありません。その様子を見て取ったバーツは、急いで言葉を継ぎます「スコットのヤツ、ちゃんと話せばいいのに。」
この言葉を話した後のバーツの表情を見れば、「エロ本を無理やりスコットに預けた」というのは嘘であることが分かります。でも、バーツはクレアの心情…心の奥では、スコットを信じていたいという気持ち…をよく理解して、彼女がスコットを信じるための口実を与えたのです。いくらクレアが頭のいい女の子であっても、彼女はまだまだお嬢さん、バーツの芝居を見抜くほどまでには、世の中を知らないのでした。
こうして、バーツの活躍でクレアの誤解は解けました。でも、クレアの悩みは続きます。スコットに対するクレアの反応は、彼女の育ちが良い故に仕方ないのですが、それすら彼女は許すことができません。そんなクレアに、バーツはビーム銃を貸すことで、心を晴らしてあげようとします(この場面で「あのスコットがあんなものに興味を持つわけがないもの」とクレアが話しますが、いかに彼女が潔癖症なのかを示す、いい台詞だと思います。バーツの裏返った笑い声が最高!)。
もうすぐ夜明けの空に向けて一心にビーム銃を撃つクレア。そんな彼女の姿を、歩哨当番を代わったシャロンとペンチが見ています。二人は男性陣の行動をあれこれ分析しますが、この場面での会話が、二人の「女性」度の違いを的確に表現しています。
ところで、どうしてこの二人はあの一件を知っていたのでしょう。それはきっと、バーツが話したに違いありません。いつの間にか噂となって広まることでスコットとクレアが傷つかないようにするため、バーツが予め上手に伝えたのでしょう。こうして最後までフォローをするあたり、バーツ一流の優しさが際立っています。