静止画像の大半がいわゆるイラストであることは興味深いものがあります。
特にここ10年余りの間、中島潔氏が手がけた作品は、みんなのうたの映像表現として大きな位置を占めており、事実上「みんなのうたのイラスト＝中島潔」といっても過言ではないほどです。また、中島氏の現在の人気も、「みんなのうた」のイラストによる部分が多少あることも事実であり、両者の関係は親密であると思われます。
基本的に［かんかんからす］など楽曲が詩的イメージを重視して動きが少ないものに、イラストを適用する場合が多いようですが、最近では［あなたが見える］などの、やや激しい曲にも用いられるようになりました。変わったところでは［ポケットの中で］もイラストを用いています。
また、イラストの原画を元に他のアニメーターが動きをつけるというケースも、［キッチン・レディー］［おひるねのゆりかご］など、いくつか見られます。これらの作品は便宜上「アニメーション」に分類していますが、映像を見ていると、もとのイラストの雰囲気を崩さずにいかにして動かすか、アニメーターが苦労されている様子がよく分かります。
写真を用いた作品は［ありがとうさようなら］［ちょっとずつ秋］［秋風にのせて］など、ごくわずかしかありません。いずれもファンタジックな仕上がりになっているのですが、その中でも［ありがとうさようなら］の完成度は優れています。
たびたび再放送される曲なのですが、歌詞の内容に極力あわせながら、ほんの少し斜めからうたにスポットライトを当てている演出は、見毎の一言につきます。最後のリフレインで児童の集合写真をパンしていくシーンも、すばらしい出来映えでした。
切り絵や影絵といった映像は、若干の動きは可能であるものの、基本的には静止映像の一種であると考えることができます。シャープな輪郭が織り成す独特の感触は捨て難いものがあります。特に［雪うさぎ］に見られる表現力の高さは、特筆すべきものがあるといえるでしょう。
こちらも作品の数が少ない上に、最近ではめっきり製作されなってしまいましたが、いつの日か私たちを驚かしてくれる作品が登場することを、期待しています。
当たり前ですが、静止画像には基本的に「動き」がありませんので、それを補うために、画面ではカメラのズームアップやパンなどがよく用いられます。このとき、どのタイミングでカメラを動かすかが、映像としての出来映えを大きく左右します。したがって、映像制作スタッフはカメラワークに細心の注意を払っているようです。
また［ありがとうさようなら］でサッカーボールなどが飛び出すシーンがありますが、こうした「動き」の部分をどこで組み入れるかも、重要なポイントになります。
こうした細かな演出が静止画像を影から支えていることも、もっと注目されて良いと思います。 | 
