山口さんちのツトム君

みんなのうた最初の国民的ヒット曲。

初放送は1976年4/5月。74年の第一次石油ショックから続いていた日本の不況は、この年になってもなかなか好転していなかった。また、2月にはロッキード事件の本格追及が始まり、世相は一段と暗い方向に向かいつつあった。そんな折に、幼い頃の甘酸っぱい思い出をくすぐるようなこの曲は、子供たちというより、むしろ大人たちに共感を与えたようだ。こうした背景もあってか番組での放送開始直後から、たちまち人気が沸騰した。田中ケイコのかわいいアニメーションも話題作りに一役買った。ちなみに、歌詞が「女の子が男の子を心配する」という内容にもかかわらず、歌っているのが男の子という一種のミスマッチが、この作品の味わいをいっそう深くしていた。
NHKは殺到するファンレターに戸惑いながらも、その人気に応えて再放送を続けたが、そのたびに大きな反響を呼んだ。当時の人気のほどは、この年発売されたNHK監修によるみんなのうたレコード集の第1曲目がこの曲であったことだけでも、容易に想像がつく(→別項参照)。とうとう最後には、作品に登場した二人の後日談ともいえる続編「ユミちゃんの引越し」が製作・放映され、こちらも評判を呼んだ。
この曲は現在でも時折再放送されており、みんなのうたの中でも希に見る長寿作品となっている。親子二代にわたってこの曲が大好きという方々も多いのでは?

※原注…この作品放送当時、私はまだ幼く、当時の様子を生で知っているわけではありません。この項の記述は、私のおぼろげな記憶と当時の新聞縮刷版などを参考にして、構成しています。