ちょっとできすぎた面もあるにせよ、どこまでも私達が実際に生活した場所と近いところで展開されたラブ・ストーリーは、やはり懐かしく、思い出をくすぐるものがあるのです。小学5年生のラブ・ストーリーのどこが青春なんだといえばそれまでですが、じゃあ「青春」っていったいいつの話なんだ、と問われれば誰もすぐには答えられないでしょう。その子供から一歩踏み出そうかという微妙な時期の子供たちの心の動きを見事に自然に描き切ったというだけで、この作品は永遠の価値を持っているのかもしれません。もちろんそれはちょっとおませな女の子(女の子ってみんなませてますが)の視点から見たものなのですが、そこからちゃんと男の子の視線が感じられるところがいいのです。 5年間にわたって連載された原作のまんがでは、あずきちゃんたちは1年毎にきちんと進級して、最後は中学校を卒業して終わります(印象的なエピローグが付きます)。アニメーションではその基本的な構成を破棄して、3年間一貫して小学5年生の彼女たちを描き続けました。もちろん、一部を除いてエピソードの大部分はアニメオリジナルのものですし、原作には登場しない多くのキャラクターが、アニメ版では決定的な役割を果たしたこともしばしばです。逆に原作では重要な意味を持って描かれる中学生のあずき達のエピソードは、アニメでは全く登場しません。ともすれば失敗に終わりがちなこうした変更が奇跡的ともいえる成功を収めたのは、ひとえに「今の子供たち」を描こうとしたスタッフの努力の賜物でしょう。 その過程で原作を大きく踏み越えることになるのですが、それも結果として原作の世界観を損ねなかったのはお見事としか言いようがありません。そして、それを可能にさせた原作のあたたかな世界にも、私は賛辞を惜しみません。 原作におけるふやふやした線は、正直な所とても上手だとは言いづらいのですが、それがマイナスに働かないだけの作品に対する細やかな感性がコマの間から滲んでいることに好感を覚えました。また、原作に登場する人物の本来ならありえないところに描かれる線が、実に巧みな形でアニメ版にも取り入れられてャラクターの心理描写に大活躍したことも、とても興味深いものでした。 確かに彼女たちは1990年代に生きていた子供たちです。でも、同時に当時既に大人であった人達が彼女たちと同じ年頃だった頃にも、きっと生きていた子供たちです。この二重の意味で実在感を感じさせるキャラクターこそが、この作品の真の魅力なのかもしれません。それは私達に、子供が持つ大切な部分は、時代を越えてもそんなに変化しないものなのだよ、と教えてくれているのかもしれません。この点においても、この作品は傑作の名に値すると勝手に断言してしまいます。それにしても、DVDが出てくれないものでしょうか。 …などと言っていると、本当にDVDが発売されることに!! そこで、しっかり別項での紹介を始めることにします。 (2002.5)

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