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人類とワームと呼ばれる謎の生命体との大戦があり、地球はその痛手からようやく復興を始めていました。瀬戸内の島にすむ剣道が大好きな少女・桜野音羽は、ある日突然、軍が研究を進めている「飛行外骨格=ソニックダイバー」という新兵器のテストパイロットになるよう、要請を受けます。三浦半島・追浜の基地にやって来た音羽は、同じ民間人の二宮可憐・職業軍人の一条瑛花と一緒に訓練に励みます。平穏な日々が続きますが、彼女らの知らないところで、世界は大きく動き始めていました…。 |
| 美少女+メカとくれば、そりゃもうモエモエな作品に決まってるじゃないですか。当然あんなシーンやこんなシーンのオンパレードで…というだけなら、私はこの作品にとうていついていけなかったでしょう。 実際ヒロインの女の子たちは、ボディラインもくっきりすぎるお姿でメカに搭乗します(音羽の搭乗機の整備担当である僚平ならずとも、ミドルティーンの少女があんな格好で登場すると、思わず見とれて…もとい、目のやり場に困ってしまいますね)し、それに着替えやらお風呂やら、ほぼ毎回何かとサービスシーンが登場します。でも、それらは常に「サービス」であって、それ以上の役を果たすことはありません。制作サイドが描きたかったのは、少女たち（とおっさんその他）の交流と成長の物語であり、サービスシーンは本当にサービス、またはアニメで健康なお色気はどこまで表現できるかという命題にチャレンジした結果にすぎません。 この試みは意外と難しい。萌えという要素が表現されていることを認めつつ、それに頼らない作品を作り上げることは、現在のTVアニメ文化の中ではかなり無理があるような気がします。そもそも、その危ういバランスを描き分けることができる作り手なんて、いるんだろうか? 結論を言ってしまうと、この作品はかなりのところまで、この無謀な試みに成功を収めたといえるでしょう。ストレスを感じさせない語り口、人の生き方として素直な毎回の結末、そして適度なお色気(笑)。要するに、最大公約数的な娯楽作品としてきちんと仕上がっているのです。 この最大公約数的というのがポイントで、特定マニア層向けの作品がTVアニメの大勢を占める中で、ごく普通にアニメの語法を楽しめる視聴者なら、25分間無駄な労力を費やさずに楽しく時間を過ごせてしまう作品って、最近ほとんどないのです。少々飛躍したたとえをするなら、アンパンマンシリーズのような作り込みで、成人男性向けの娯楽アニメを作ってしまったのがこの作品だと言えるでしょう。 これは実はすごいことじゃないかと思うのです。アニメという表現手段を存分に活用した良質のエンタテインメント、といえば少々ほめすぎですが、作品全体を通じて、楽しむための作り込みのうまさは、実にすばらしいと思います。というか、そういった作り込みを感じさせないところが、とても心地よいのです。 また、登場人物の設定にも、心地よさを追求すべく最大限の努力が払われているところがいいですね。ヒロインである音羽がソニックダイバー隊のリーダーだったりしたら、彼女ののびのびした魅力はもう引き出せません。なるべくしてリーダーになる瑛花も、若さ故の過ち(古い言い回しですなぁ)をどんどん見せながらも、リーダーとしてしっかり振る舞います。彼女ら(最後は５人になってしまいます)を見守る冬后大佐にしても、才能ある高級軍人・ちょっと不憫な中間管理職・ごく普通の冴えないおっさんといった役どころを過不足なく演じてくれます。そんな彼の豊かな人間性になかなか気づけない瑛花の姿が適度にツンデレなのですが、それが決して過剰に描かれないところが、実にうまいのです。 こうした、要所を押さえながらも、味付けをぎりぎりのところで控えるという描写が、この作品では冴え渡っていたと思います。全てが絶品というわけではないけど、ちゃんと一つのお話としてまとまっていて、無駄な労力なく楽しめる。それらが全体として一つの物語として過不足なく仕上がっているので、途中で胸焼けを起こすこともなく、最後までのんびりと見続けることができる。そして、最終話をまるまるエピローグに当てるという大判振る舞いがあることで、登場人物の夢がきれいに昇華される姿を、私達は満足げに楽しむことができてしまう。…これは物語の進行として、実に贅沢な時間のかけ方だと思うのです。 見方を変えると、萌え大好きな方や、ディープな皆さんにとっては、この作品はいかにも食い足らないかもしれません。だけど、そういうトレンドを追いかけ続けるあまり、一般人には理解不能/摂取不能な味付けの作品が続出している現状では、こういったシンプルでそれなりにおいしい作品の存在がむしろ新鮮で、筆者としては断然こちらを応援したくなります。 そんな作り込みであるが故に、おそらくアニメ社会での評価はあまり高くはないでしょうし、今後話題に上ることもほとんどないでしょう。でも、そういう扱いこそ、この作品にはふさわしいのかもしれません。ごく普通に楽しめるということがどれだけ大切なことか、それがわかる人にとって、この作品が絶賛されるか否かは、意味を持ちません。作品の放映中、のんびりと楽しい時間を過ごせただけで十分じゃないですか。 (2008.5) |
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