モモとモモ

その二つのシーンは、どちらも作品全体の大きなクライマックスとして登場します。 旧作「モモ」45話では、モチャーがモモに向かって投げたペンダントが、悪党の放った銃弾によってこなごなに打ち砕かれてしまいます。 新作「モモ」第60話では、モモは「こんな魔法なんて意味ないよ!」と叫んで、自らペンダントを投げ捨ててしまいます。(その後、それを拾い上げた人間のモモから手渡されます) 同じ「夢」と「希望」をテーマにし、しかも題名まで同じこれら二つの作品は、実はその世界を読み解くにつれて、次第に全く別の物という印象を与えてくれます。主人公が魔法の象徴を失うという、全く同じことを描いたこの二つの場面でさえ、その内面に描かれている事柄とその場面が目指す場所には、何一つと言っていいほど共通しているものはありません。 そう、「夢」と「希望」を描くという点では一緒でも、二つの作品が見つけ出した「夢」と「希望」、そしてそこに広がる世界は、互いにおよそ似ても似つかぬものでした。そして、二人のモモは、各々の世界の中で全く異なる生活を歩み、自らの使命を果たそうとします。 これら二つの「モモ」が、どうしてこんなに違う作品となったのでしょう。同じモモと名乗る二人の少女は、どうしてこんなに違う道を歩むことになったのでしょう。 ここでは、そうした二つの「モモ」の間に横たわる溝について、考えを進めることにします。 ただし、このコーナーを書き進めるには、私自身が新作「モモ」をしっかりと見なくてはなりません。実は、新作のモモは、私には見るに耐えかねる哀れな存在だったので、この作品を全部見ることはとうとうできなかったのです。率直に言うと「平成の世には、モモですら生きていく場所がないのか」と言ったところでしょうか(ファンの皆さん、ごめんなさい)。…というわけで、このコーナーに増築が始まるのは、早くても2000年のことになると思います。 別の見方をすれば、このコーナーは私にとって新作「モモ」再発見の場所になるのかもしれません。果たして新作「モモ」は自らの夢と希望を守ることができたのか、私なりに整理をつけた上で、この場所で皆さんとお会いしたいと思います。