主題の変容

「銀河漂流バイファム」のBGMを注意深く聴いてみると、いや、のんびりと聞いていても、「あれ、この旋律は他の曲にも出てきたな」と思いつくことが、きっと何回かあるはずです。
実際、この作品のBGMはいくつかの基本となる旋律=専門的には「主題(テーマ)」と呼びます=を巧みにアレンジして、様々なイメージを持つ音楽に仕立て上げています。その結果、BGMの各曲は互いに緩やかなつながりを持つことになり、BGM全体としてまとまりの良い印象を与えています。こうした音楽の作り方は、どちらかといえばクラシックの世界でよく見られるものです。

(アニメ作品のBGMには以前からこの手法による作曲がなされた物が多数ありますが、それはまさに作品としての統一性を持たせるためのものです。近年BGMのシンフォニック化が進展するにつれて、この傾向はより顕著になっています。)

バイファムのBGMにおける主題はいくつかありますが、ここではその中でもとりわけ中心的な役割を果たしているものをご紹介します。ほとんどのBGMは、次にあげる2つの主題から派生したと言っても、過言ではないでしょう。

各々がどんなメロディーなのかは、実際にBGMをお聴きいただくとして、ここではそれらの主題がどのように変化を遂げているのか、簡単に分析/紹介しています。これが絶対に正しいという保証はありませんが、BGM全体を一つの音楽作品としてみたときの捉え方の参考として、お楽しみください。

こうしてみると、あれだけ多彩なバイファムのBGMが、実は意外と単純な構造になっているように思えてきます。たった二つの主題から、これだけの世界を導き出せるなんて、ちょっと驚きです。
それはとりもなおさず、この作品が音楽的に優れていることの証左であるとともに、音楽担当の渡辺氏の、この作品を作るにあたっての考え方を示しているようにも思えます。
「バイファム」そして「星々」。まさに「銀河漂流バイファム」を表現するのに、格好のテーマだとは思いませんか?