1.外見

大きなベル(朝顔)も印象的ですが、楽器を構えると前方に突き出す部分…スライドこそが、この楽器の最大の特徴でしょう。この仕組みがあるため、トロンボーンは管楽器の中で極めてユニークな位置を占めています。

2.歴史

「サックバット」という楽器から次第に進化を遂げました。「大きなラッパ」というのが、この呼び名の基になっています。人の声にもっとも近い音色であることなどから、18世紀終わりごろまでは神聖な楽器とされ、教会の礼拝堂以外で演奏されることは希でした。

3.音域

金管楽器の中では、中音部からやや低い部分を担当しています。全ての楽器の中でも、真ん中よりやや低いぐらいの音域を担当します。普通の奏者で約2オクターブ半が簡単に吹ける範囲です。

4.音色

全ての管楽器の中でもっとも表現力と音量に幅があります。特にffでの勇壮さは、他に比べる物がありません。また、荒々しい音も得意です。激しい打ち込みなどは、時としてトランペット以上の効果を与えます。
一方で、あたたかく優しい音色も得意で、実に良い響きを持っています。同様に、ストイックな、もしくは寂寥感を伴うような音色も、好んで使われています。ffではもちろん、ppでも音楽全体を支えることのできる響きの豊かさが、この楽器の持ち味です。
それからもちろん、スライドアクションも活かした底抜けに陽気な音色は、この楽器のもう一つの顔といえるでしょう。
なお、トランペットほどではないものの、この楽器でもミュートを使う場合があります。

5.使われ方

和音がよく響くという特性を生かして、この楽器は通常3ないし4本一組で、和音を担当する楽器としてよく用いられます。特に吹奏楽では、和音でリズムを刻むというのが、重要な仕事の一つです。
ここぞというときには、音量の大小に関わらず旋律を演奏しますが、この効果は絶大なものがあり、特にffでテュッティ(同じ旋律を一緒に吹くこと)を吹くときには、音楽全体を支配することさえあります。また、ppでの端正な表現は、音楽を引き締めるのに極めて有効です。
その一方で、コミカルなイメージを表現するために使われることも、特に軽音楽の世界ではよく見られます。スライドがあるため、管楽器では珍しく完全なグリッサンドができるので、それを活用したユニークな譜面が、いくつもあります。

6.仲間たち

この楽器にもいくつかの兄弟がいます。特にバストロンボーンは、現在でも大活躍しています。
※普通のトロンボーンのことを特に区別するときは、「テナートロンボーン」と言います。

●兄弟…アルトトロンボーン・バストロンボーン・コントラバストロンボーン