| この後、カチュアが自分の素性を知るに及んで、ようやくケイトは自分を取り戻し、子供たちに真相を語ります。そして、カチュアの苦しみを共にしようとします(15話)。しかし、カチュアはその重みに耐えかねて、ジェイナスを飛び出します(16話)。スコット達からその知らせを聞いたケイトは、即座に自ら救出に向かうことを決意します。その理由を「これは大人の問題」と説明するのは、言うまでもなく15話のロディとの一件が影響しています。 そんなケイトの姿をロディは喜んで迎えます。彼にとっては憧れのケイトさんに戻ったことが何よりも嬉しかったのです。ここでロディはケイトの護衛を買って出ます。バーツも同行しようとしますが、ジェイナスの戦力がなくなる危険を冒せないため残ることになりました。バーツは「ケイトさんのナイト役任せたぜ」とロディに声を駆け、ロディも明るく肯きます。おそらく、ロディはバーツに昨夜の一件を話していたでしょう。ロディは彼なりに悩んだはずですが、バーツは彼の不安を和らげ、励ましたはずです。このシーンでの2人のいい表情が彼らの熱い友情を感じさせてくれました。 |
| さて、ケイトとロディは相次いで出撃します。カチュアの小型艇に追いつくまでの間、ケイトは無線を通じてロディに話しかけます。ケイトは大人の女性として、昨日のロディの行為の意味を冷静に振り返り、それを受け入れていました。ケイトはそんな自分の気持ちを素直にロディに伝えますが、ロディはそれを受け取ることができません。彼はただ「すみません」と言うことしかできません。ケイトはそんなロディの様子に彼の純粋さを見て笑いますが、ロディはそれにすら萎縮するばかりです。なんとも主人公らしからぬ行為ですが(笑)、自分より遥かに年長の女性に恋をした、そしてその女性にあるまじき行為をした(と感じている)少年の姿として、これ以上自然なものがあるでしょうか。16話全体の中では息抜き的なシーンなのかもしれませんが、このシーンが後の物語に与えた影響は大きいと思います。 このあとカチュアの救出作戦が描かれますが、ここではケイトが指揮官役を務めます。すっかりケイトに従順となったロディの「はい」という返答が印象的です。 |
| しかし、運命は2人に過酷な試練を与えます。カチュアの救出には成功したケイトですが、ジェイナスへの帰途エンジンに被弾してしまいます。ロディはケイトから脱出不能である連絡を受け、すぐに救出に向かいますが、ケイトから「来ちゃだめ!」と拒否されてしまいます。そして、ケイトから発せられる子供たちに向けたメッセージを聞きながら、ロディは次第に遠ざかってゆくケイト機をただ呆然と見送ることしかできません。もうこの時点では、ロディも含めた子供たちはケイトの運命を悟っていたのでした。 子供たちへのメッセージが終わった後スピーカーから流れてきた言葉は、おそらくそれを語ったケイトですら予想していないものではなかったでしょうか。「ロディ、あなたは素敵よ…」から始まるほとんど独白とも言える台詞は、まさにロディだけに向けられたものです。それをロディはどんな気持ちで聞いたのでしょうか? このときのロディはそのメッセージ自体には何の感情も持ちえなかったのではないでしょうか。自分の目の前で大切な人が死んでゆく。でも自分は何もすることができず、ただあの人の言葉が聞こえてくるだけ。ロディにとって自分がこんな状況にあることを許すことは絶対にできなかったに違いありません。彼の心の中は、もっとも根源的かつ純粋な感情で占められていたように思うのです。そんな思いが表に出るとき、彼は「ケイトさーん!」と叫ばずにはいられなかったのです。 |
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やがてロディがその意味を理解できないままにケイトのメッセージは終わり、「寒い…」という言葉を最後に、通信はホワイトノイズにかき消されます。そして、ロディ(と子供たち)の見守る宇宙空間で、ケイト機は火球に包まれます。ロディはもう一度叫びます。 このような形で大切な人との別れを経験せねばならなかった少年の怒りと悲しみをこれほど明確に刻み込んだ台詞を、私は未だ他に知りません。それはロディにとって大人への階段を昇ると言うにはあまりにも辛く、むごい別れでした。｢心の傷」というありふれた言葉ではとうてい表現できない、大きな大きな生きることの悲しみでした。 |
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