スコットの成長と仲間たち(その4)

こうしてみると、この一連のシークエンスは、特に男子キャラの性格を描写する上で決定的な役割を演じたことになります。物語の牽引役としてのロディ、大人びた役割を担うバーツ、ちょっと無鉄砲だけど感激屋のケンツ、ルチーナに頭が上がらないけどやっぱりルチーナが大切なマルロ。そして、苦労しながらも指揮官役をこなそうとするスコット。こうした男子キャラの性格描写は、まさこのシークエンスで決定的なものになったといえるでしょう。
また、それまでスコットを半ば馬鹿にしていたケンツが、銃を持つスコットの姿を見て態度を一変させたのを筆頭に、他の子供たちのスコットに対する評価が変わったことも見逃せません。ケイトの前でバーツがスコットを持ち上げる場面も、スコットが結局は役目を果たしたことをバーツ自身が認めていたからこその表現です。スコットがキャプテンシーを確立するのはまだ先のことですが、その土壌はまさにここで形作られたといえるでしょう。
これら一連のキャラクター描写(あるいは物語の進行)がスムーズに運ぶように、7話全体(正確には5話から)を通じて綿密に計算されたキャスティングの妙は、驚くべきものがあります。スコットがキャプテンシーに気づくためには、陣地にいるキャラクターはあのメンバー以外には考えられません。また、すべてが解決して、彼らがケイトと再会する場面は、単にキャスティングが上手いだけでなく、第6話で描かれたケイト・ロディ・バーツの人間模様が巧みに織り込まれています。
「ルチーナのぱんつ」以外にはファンの間でも話題に上ることがあまり多くない7話ですが、スコットというキャラクターの成長を語る上では、欠かすことのできないお話でした。また、この作品の特徴でもあるキャスティングの妙が如何なく発揮された回でもあったのです。


こうして子供たちのリーダーとしての第一歩を踏み出したスコットですが、その道のりは決して順調なものとは言えませんでした。まぁ、そんなことは皆さんには先刻ご承知のことなのですが、その一種の「不器用さ」がスコットの人間性にある種の深み(というかリアリティ)を持たせているように思えます。とりわけ、9話のエピソードは、スコットにとっては(ある意味ではエロ本事件以上に)思い出したくないものだったかもしれません。
このお話冒頭のスコットは、真面目さゆえの観察眼を披露して、私たちを楽しませてくれます。しかし、彼が指揮官の地位を周囲に印象付けようとしたところから、事態は急変します。
彼の通信を察知したかのようにレーダーに現れる敵の機影。子供たちはついに本格的な戦闘に巻き込まれてしまいます。動転したスコットは、指揮官として何もすることができません。子供たちはばらばらに行動したため事態はさらに悪化しますが、シャロンの機転で辛うじて危機を脱することができました。
敵が撤退した後、最後まで発砲しつづけるスコットの痛々しい姿は、彼の悔恨を見事に表現した名シーンでしょう。ここではケイトが彼をいたわるところまでしか描かれませんが、このエピソードで彼の心は大きく傷ついたことでしょう。

スコットがその痛手を癒すエピソードは、残念ながら直接作中で描かれませんでした。その代わりというわけでもないのですが、10話で彼が子供たちの指揮官からリーダー(*)へと成長する姿が描かれます。

(*)先述の通り、作品中ではスコットの地位を指す言葉として、主に「指揮官」「キャプテン」「リーダー」の3つが用いられました。特に後者2つは(残念ながら)使い分けがあまり明確ではなかったのですが、「指揮官」と他の2つとの間には、比較的はっきりとした区別がなされていました。

敵に囲まれたこのベルウィック星で生き延びるという極限のテーマを前に、ついにバーツとロディは決定的な対立を迎えます。それは他の子供たちも巻き込み、とうとう彼らは2つのグループに分裂してしまいます(ロディ以外の年長組およびケイトは、事実上バーツの側につきます)。
スコットはバーツの意見が正しいと思いながらも、ここで自分たちが分裂することの愚かさを強く感じていました。それはまさに、6話でバーツに「仲間」の大切さを指摘されて、彼が理想の子供へと変化したことと呼応しています。それゆえ彼は、アゾレックに残ってロディの説得を開始します。

(本来ならスコットの役目はケイトがするべきなのですが、彼女は再びそれを放棄してバーツたちに同行します。彼女は大人ではありますが、これだけの子供をまとめる器量は持ち合わせていませんでした…酷な言い方ですが、24話での彼女の独白を聞けば、それは明らかです。それに、現実の私たち大人だってケイトと大差ないと思いませんか？…また、物語の進行上、スコットには基地にいてもらわないと困るという制約もありました。)

でも、そんなスコットの説得に、ロディは一向に耳を貸そうとしません(このあたりがロディの幼さですね)。その時、スコットのもとにようやくジワイメルウからの連絡が入りますが、その内容は最悪のものでした。ジワイメルウ壊滅の知らせを聞いて、スコットはロディとともにバーツたちの救出に向かいます。