第46話
いつまでも13人

各話チーフスタッフ

脚本	星山博之	絵コンテ	横山裕一朗
演出	三浦将則	作画監督	芦田豊雄

メイン&サブキャラクター(今回登場分)

スコット	ロディ	バーツ	フレッド	ケンツ
ジミー	マルロ	クレア	マキ	カチュア
シャロン	ペンチ	ルチーナ		ジェダ

ゲストキャラクター(キャラクター紹介登場分以外)

スコットの父…稲葉実	デュボア…原えりこ
艦長(ギャラクレー)…喜多川拓郎	ゲリラ…鈴木勝美
幹部…小滝進	ゲリラ…小野健一
通信兵…福士秀樹

ものがたり
前回から数時間後・ジェダたちのシャトル→地球軍旗艦バンガード

地球軍の接触に成功したジェダは、まずロディとバーツを地球軍の旗艦バンガードに送った。バンガードの艦長と会見したロディたちは、カチュアとジミーは戦災孤児として扱うことで問題ないと告げられ、安心する。また、シャトル乗員全員の乗艦許可も与えられた。知らせを聞いて喜ぶ子供たち。一方、一人沈み込むジミーに気づいたカチュアは彼を元気づけようとするが、逆に鋭い言葉を受け、戸惑う。早速バンガードに乗艦した子供たちは地球の英雄として大歓迎された。同時に運び込まれた石板は、兵士たちを驚かせた。カチュアたちも後からデュボアに付き添われてバンガードに乗艦した。 バンガード艦内では地球軍とリベラリストによる初めての会談が開かれていた。一方、子供たちは食堂で最後の会議を開き、スコットがキャプテン退任の挨拶を始めた。その頃ロディは、バイファムに最後の別れを告げていた。やがて、両親と音声通信がつながったとの知らせが入り、ブリッジに向かう子供たちを、カチュアとジミーが静かに見守っていた。子供たちは通信機越しながら、ようやく両親との会話をすることができたのだった。 子供たちが食堂に戻ると、そこにカチュアとジミーの姿はなかった。まさか会見が終わったジェダたちと一緒に行ったのでは、と子供たちは不安を感じた。マキが2人の荷物がないことに気づき、その不安は的中する。子供たちはブリッジに行き、ジェダのシャトルに交信するが、デュボアが2人の気持ちを代弁して、今はそっとしてあげてと答えるのだった。カチュアが紙飛行機を添えて地球軍の兵士に託したテープには、2人が悩み抜いた末の言葉が入っていた。それを聴いて、子供たちを別れの悲しさが襲う。窓に駆け寄り、2人の名前を叫ぶ子供たち。 …その時、ロディの頭にひらめくものがあった。やがて、ジェダはバンガードが主砲の標準をこちらに合わせたのに気づき驚くが、そこから発射されたのは、カチュアとジミーへの餞(はなむけ)に作られた紙飛行機の大編隊だった。喜ぶカチュアたちと、シャトルを笑顔で見送るロディたち。遠く離れようとしていても、子供たちの心は強い絆で結ばれていた。紙飛行機に包まれながらカチュアたちのシャトルは視界から消え去り、バンガードは地球への旅路につくのだった。

ほうがんのこだわり

とうとうやってきた最終回。ここに至るまで、子供たちはどんなに苦労し、悩み、そして成長してきたことでしょう。でも、もういいのです。無事に両親と話をすることができたのですから。長かった彼らの旅が無事終わったことを、素直に喜んであげたいのです。あの通信室のシーンでリハーサルを繰り広げるシャロンの姿が、いかにもシャロンらしくて、いじらしいですね。 一方、この回では大人の世界が久々に描かれることになります。子供たちが持ってきた石板に驚く地球軍の兵士たち。会見が上手くいくかと心配なジェダとデュボア(それに気づかずに話しかけるスコットの様子が、そわそわする彼の心情を上手く表現しています)。食堂で今さら和平なんて、と話し合う兵士たち。その善悪はともかく、彼らはみんな「現実の世界」の住人です。大詰めになってバイファムはこんな風に重い命題を再提示します。それでもジェダは語ります、「あの子供たちに恥ずかしくない行動をしたい」と。現実はそんなに甘くはないけども、それでも理想を追うことが大切なのだというメッセージを、この台詞を通して伝えたかったのかもしれません。 カチュアとジミーがククト側に残る結末は、この回だけを見ても十分に予感させるものがありました。両親が無事だと聴いて子供たちが喜ぶ瞬間にカチュアとジミーの頭(と帽子)が目立たないように描かれているあたり、心憎いまでの演出です。それでもジェダたちのシャトルが去るまで、本当にその事実を受け入れることは、視聴者であった私にもできかねていました。それはスコットたち11人の子供たちにとっても、そしてなによりカチュアとジミーにとっても同じだったのではないでしょうか。 カチュアにとっては、いくらジミーやデュボアらがいても、結局は誰一人知り合いがいない星に一人残り、生きているかどうかも分からない、そしてまだ見たこともない両親を探すことになります。ジミーに至っては、もはや身寄りはだれ一人なく、さらにはせっかく弟にならないかと誘ってくれたケンツの厚意を無駄にすることになります。それがどれほど辛く、苦しいことか、私は語るべき言葉を知りません。それなのに、なぜ… でも、二人が懸命に悩み抜いて選んだ結論を、紙飛行機を飛ばすという行為で子供たちは祝福します。レッドベアのマークが物語を締めくくるあたり、実にバイファムらしいこだわりです。直前までのリアルな宇宙空間の描写(バンガードが回頭するとき、きちんとバーニアを吹かすのには感動しました)とは一変して、あのシーン全体が実際にはありえないことは承知です。でも、いいじゃないですか。彼らのためなら、ああして紙飛行機が飛ぶところを見せてあげたい。 もちろん、短時間にあれだけの数を11人で作れるわけがありません。バンガードの非番の兵士たちが(おそらくはいくらかの愚痴をこぼしながら)手伝った賜物なのです。そんな兵士たちも、面識のない2人の子供の幸せをきっと考えたはずです。その思いが続く限り、バイファムの子供たちが持ち続けた理想は、決して消えることはないでしょう。 あの兵士たちこそ、神田監督から見た私たち視聴者そのものなのかもしれない。そんなことを最終回を見直しながら考えていました。

→上村

→sally

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