第15話
危機一髪の大バトル! 男性7人 vs. 女性7人!?

各話チーフスタッフ
脚本 伊東恒久 絵コンテ 吉本毅
演出 山口祐司 作画監督 近永健一

ゲストキャラクター…なし

アイキャッチ:
ロディ・バーツ・マキ・ケンツ

ものがたり
タウト星への軌道上
再び子供たちだけになったジェイナスは、タウト星への軌道を航行していた。しかし度重なる戦闘によるジェイナスの損傷は大きく、子供たちはその修理に追われ、疲れていた。そんな中、バーツがルチーナに話した言葉が、マキたち女性の機嫌を損ねてしまう。互いに引くに引かれなくなり、ついに女性は男性に戦闘状態に入ったと宣言してしまう。食事にまで悪戯をされた男性は激怒する。
険悪なムードの中、スコットはなんとか事態を打開しようと一計を案じる。かくして、男女対抗戦が始まり、1回戦の障害物競走はカチュアが、2回戦のキャベツ切り競争はフレッドが各々勝利した。しかし、男女仲よく引き分けたのだから仲よくしようとなだめようとするスコットを、他の子供たちは冷たくあしらう。
つまみ食いを女性に見つかり、屈辱を味わったケンツは、その復讐に消火器を持ち出して、女性に吹きかける。女性も反撃し、駆けつけたロディたちも巻き込んで、食堂は大混乱になった。しかし、この騒ぎで子供たちのストレスは発散され、いつしか対立も解けていたのだった。

ほうがんのこだわり

今回から4回分の物語は、ボギーが不調であることをベースにした一種のインターミッションのような形式を取っています。「ボギー不調編」ともいえる一連のお話は、この作品本来の物語とはかけ離れたものでした。しかし、それらが結果的に「13」を通じてもっともバイファムらしい演出となっていたことは、皮肉としか言いようがありません。ここでは作品の主要テーマ群のほとんどが登場しない代わりに、(現在風にカリカチュアされた)13人の生き生きした姿が観られます。それをどう取るかは、観る人のお好み次第というところでしょう。
ところで、スコットファンである私にとって、今回のスコットの描写は何度見直しても納得いかない部分だらけなのですが(笑)、それを差し引いても、今回がよくできた回であることは認めないわけにはいかないでしょう。丁寧に描かれたジェイナスの日常(補修作業風景なんて心憎いですね)、疲れ気味の子供たちが見せる心の揺れ、そして的確な各キャラクターの役割。まさに見事、お見事です。もちろん、作画が快調だったことも、キャラの動きがよかった一因でしょう。
これまで登場する度に裏目に出ることの多かった前作からの引用も、この回では物語と上手く溶け込んでいます。特にそれを踏まえたクレアとペンチの描写はすばらしかったと思います。また、ケンツ軍曹の蒙古斑もぴったりでした。こんな引用がなぜこれまでできなかったのか、と思わずつぶやいたものです。
一方で、こうしたお話が前作ではけっして登場しなかったであろうことも、また確かです。それは物語の構造だけが理由でなく、子供たちの性格付けの変化がなくては今回の話が成立しないからです。(「13」初期から異なっていた)スコットとバーツはもちろんですが、マキの描写の変化に驚いた人も多いでしょう。また、クレアの役回りも見事に変容しています。ここに描かれているのは、10数年前の子供たちでなく、まさに今(1998年)を生きる子供たちを10数年前の子供たちに焼き直した姿なのです。ある意味では、「13」における子供たちの世界観がもっとも自然かつ端的に表現されたのが、このお話だったのかもしれません。

(2000.07.09)

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