第19話
両親に会える!? 飛んで火に入る13人!!

各話チーフスタッフ
脚本 伊東恒久 絵コンテ 吉本毅
演出 臼田美夫 作画監督 吉本毅

ゲストキャラクター
ポール・チェンバー…緒方賢一 (リグレー・チェンバー…テロップなし)

アイキャッチ:
ロディ・バーツ・マキ・ケンツ

ものがたり
タウト星周辺宙域→タウト星ククト軍宇宙ステーション
ジェイナスのレーダーによるとククト星には衛星が2つあり、どちらが目指すタウト星なのか、区別がつかない。結局、スコットの決断で2つのうち大きくて大気がある方をタウト星と仮定して進路を取ることにした。
やがて、タウト星には敵の宇宙ステーションが周回していることが分かり、ロディ、バーツ、そしてマキとケンツがRVで偵察に向かった。ステーション内部には地球の民間用シャトル「ロブスター号」が駐機しており、中からチェンバー少佐と名乗る地球軍の服装をした男が現れたが、彼は植物学者であることが分かってしまう。バーツがさらにチェンバーを問い詰めようとしたとき、彼の妻・ククトニアンのリグレーが銃で脅迫し、4人は人質になってしまう。
チェンバーはバイファムを操縦し、ジェイナスを明け渡すように要求する。人質を取られたスコットはやむなく格納庫のハッチを開けた。その頃、機転を働かせた4人は無事脱出に成功した。ジェイナスに乗り込んだチェンバーも子供たちに取り押さえられた。
チェンバー夫妻は、タウト星にいる彼らの一人息子アランを救いに行くところだったと身の上を話す。ジミーから一緒に行けばいいと言われて、喜ぶチェンバー夫妻。子供たちは早速故障したロブスター号の修理に取りかかった。

ほうがんのこだわり

今回から始まる「もう一つのタウト星」編が、ある意味でこの作品の評価を決定づけたという事実は否めないでしょう。言い換えれば、「もう一つのタウト星」編こそが、バイファム13のもっとも特徴的なストーリー群と見なすことができます。このストーリー群が「13」でのみ描かれ得るものであることは間違いないでしょう。…そう、「13」、この数字にスタッフがこだわった結果が今回からの8話の物語なのかもしれません。
これだけ舞台が換われば当然変更があるはずのOPアニメでは、依然としてホルテたちがこちらを向いています。でも、彼女たちの物語はもう終わってしまい、このままではLD(VT)は13巻揃いません。「ボギー不調編」をいつまでも続けるわけにはいかないので、ここは一つ新キャラにでも登場願おうか…とスタッフが思っていたかどうかはともかく、結果的に残された話数を埋めようと「もう一つのタウト星」編がダッチロールを繰り返していたことは事実でしょう。この構成力の欠如が「もう一つのタウト星」編に暗い影を落とすことになります。
さて、物語は「あと8話しかない」という状況を反映して、性急すぎるテンポで進行します。舞台の主導権が目まぐるしく変わる中、子供たちは辛うじて「タウト星」に向かう手段を得ますが、その一方で物語は大人たちに委ねられます。
バイファムでは初めての泥臭い人間ドラマを描くために、スタッフはそれまでの世界観の描写手法を放棄してまでポールを動かすことに努めます。妻のリグレーは全く対照的な描写がされますが、彼女がほとんど何も語らない点は、先の物語に大きな意味を持っています。
その間に挟まれる子供たちのエピソードは、本来もっと活かされるべき物ばかりです。彗星を眺めるマキを見つめ、微笑むバーツの描写など、全編屈指の仕上がりでしょう。でも、それらは焦る物語の進行に埋もれてしまいます。後の回で私たちはその焦りが全くの徒労であったことを知るのですが、この時点では、まだそれを知る由もなかったのです。主が去り、展望台に佇む望遠鏡が、そんな私の思い（と、やがて来る子供たちの運命）を映し出してくれているようでした。

(2000.08.20)

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