彦根まで出張に行くことになり、私は大阪駅からラッシュアワーを過ぎたJRの新快速に乗っていました。電車は予定通り京都駅に滑り込もうとしましたが、場内信号が赤表示だったのか、極端に速度を落としました。
ふと窓の外を見ると向かいのホームの端におそろいの制服を着た幼稚園児の集団(ちょうど1クラス分)がずらっと並んでいます。きっと、先生が声をかけたのでしょう、いちにのさん、で、みんな一斉にこちらに手を振り出しました。もうほとんど電車は止まりかけなので、彼らの姿はゆっくりとこちらに近づいています。みんな一所懸命手を振っています。先生も楽しそうに笑いながらこちらを見ています。
あまりにかわいかったので、背広姿ということも忘れて、こちらも窓越しに手を振りました。すると、ちびっこの一人が私を見つけ、どうやら指さして何か言っているようです。たちまち子供たちは大歓声(窓越しですから聞こえませんが)を上げて、私目がけて手を振り始めました。手を振りながら飛んだり跳ねたり、もうたいへんです。
私はなんだか圧倒されてしまいました--なんせ、30名からに手を振ってもらったのは、ほとんど生まれて初めての経験でした--が、こちらも負けてはいられません(?)。めいいっぱいの笑顔を浮かべながら、にこにこ手を振り返しました。
やがて、信号が変わって、電車はゆっくりと動きを増しました。子供たちの姿はたちまち後ろへと去っていきます。きっと、「バイバーイ!」と叫んでいるに違いない子供たちの様子がとても微笑ましく、心がほんわか温かくなるのを感じました。
…ふと、気がつくと、私の周りのサラリーマンや学生の数人も、私と同じようににこにこ手を振っていました。子供たちの姿は見えなくなり、電車はちょっと遅れただけで、無事に駅に着きました。お互い、ふと顔を見合わせて、ちょっと苦笑いしてから、誰ともなく「よかったですね」と声をかけたのでした。