前回が女の子主体の重いテーマだったこともあり、今回は大きく視点と趣を変えたエピソードです。子どもの素直な友情って、どんな話を聞いてもじーんと来るものです。今回はそんなお話。だけどお涙頂戴にはせずに、愉快で爽やかな味付けになっているのが作品の持ち味でしょう。
今回、まことと勇之助の奇妙な友情が花開きます。まことの一大決意を、勇之助は誰にも話しませんでした。彼ならそうしてくれると信じていたから、まことはコーチ役を勇之助に頼んだんでしょう、きっと。頼りないまことを懸命にコーチする勇之助は、のほほんとしつつもどこか真剣です。でも、事情を知らない周囲にとっては、勇之助の態度は不思議でなりません。まだ勇之助へのライバル心いっぱいのケンにとっては、格好の機会。つい勇之助を見下したような仕草も出てきます。
ところが大会当日、まことは本当にトップで走り出します。指示役として並走する勇之助の姿にも焦って、ケンは2人の後を追いかけます。まことは勇之助の言葉を愚直に守り(!)、みなみ病院をトップで駆け抜けます。病院の角を曲がると勢いを失ったまことに勇之助は一言声をかけると、余計な気遣いはせずに一気に走り去ります。病院を見上げて事の次第を感づいたケンは再び勇之助の後を追いかけます。
川沿いの道で勇之助に話しかけるケンの心中はどんなものだったでしょうか。勇之助はそれを察してか、いつも以上に飄々とした語り口で事情を説明し、こう言葉を継ぎます「(まことがおれにコーチを頼んだのは)ケンより、オレの方が速いと思ったんじゃないの」…こうしてケンのもやもやを断ち切る勇之助の爽やかさに、私は拍手喝采です。
よたよたの帰り道、だいずに紙吹雪をかけてもらった男子3人はさぞ幸せだったことでしょう。そんな話を受けてラーメン半額セールを敢行した満塁軒はステキだ! そう、このエピローグを導くために、冒頭からケンの父が描き込まれていたんですね。こういう伏線の張り方が私の好みなのです。なお、一瞬ケンが母について言及しますが、作品中では極めて珍しいシーンです。
さて、そんな男子の事情を知らない女子は、今回かなり勝手に盛り上がっています。みなみ町の神社は相当御利益があるようで、何かにつけて女子はお参りに来るようですね。そこにトモちゃんまで登場するのが楽しい。男子のゴールが近づき、思わず「神様!」 と手を合わすかおるちゃんに至っては…。神様、たまには願いを叶えてあげてください。また、女子の部で優勝を争ったヨーコとジダマの、互いの健闘をたたえ合う(？)会話も見どころでしょう。
女の子にとって、男の子の友情は時として理解しにくい物かもしれません。それを実感するあずきの戸惑いが新鮮なエピソードでした。ラストシーンでのケンとまことに「ちょっぴり嫉妬しちゃった」というあずきの明るい声が、何だか嬉しいのです。 |
