母、祖父ときて、ついにあずきの父にスポットが当たる回がやって来ました。これまであまり目立たなかったの魅力がついに描かれた…のでしょうか？
いや、大半のアニメ作品で描かれる、光や影その他、そのキャラクターの魅力となるべきものは、(この時点の)あずきの父には皆無のように感じます。だらしなくパジャマを着こなし、他所の子供の前で昼間からビールを飲んで、ついにはパトカーが呼ばれる騒ぎになってしまいます(これは傑作でしたね)。あずきじゃなくても、女の子なら「お父さん、しゃんとしてよ! 恥ずかしいんだから!!」と怒りたくなるのも、なんとなく分かります。特技が「代返」と言われてもね←この設定を認めた当時のNHKの懐の広さに妙な感動を覚えます。
でも、勇之助たち男の子には、そんな人物だからこそ話ができるという部分が見えてきます。大人と子供という立場をわきまえたうえで、肩の力を抜いて話ができる「おじさん」の温かさこそ、彼らにとっては最大の魅力です。それは大人の女性にもより大きな安心感を与えてくれることでしょう。勇之助の母の「飾らなくていい人」という寸評は、あずきの父の人となりを見事に表現しています。そして画面上では直接描かれませんでしたが、あずきの母もきっと同じように…。
今回の演出では、子供たちとあずきの父の距離感の描写が冴え渡っていたように感じます。初めて会うあずきの父に誘われて、野山家のリビングに通された勇之助は、かなり緊張して、気まずい雰囲気です。父との会話もどこかぎこちなく、なかなか会話が弾みません。しかし、ケンとだいずがラーメンの出前を持ってきてみんなで食べるうちに、少しずつ互いの表情が見えてきて、いつの間にか話に花が咲いて…。この自然な流れがいいですね。
ここでかおるちゃんから電話が入り、父が特技を生かしてジダマの声色を出してから、物語は大きく動きます。事情を知らないジダマ達が野山家にやって来て、とんでもない勘違いをやって、みんな大騒ぎ。そこに雨が降ってきて、女の子たちは洗濯物を取り入れてあげます。
こんなごく当たり前の日常描写にも、女の子ならではのドラマが挿入されるあたり、本当に楽しい作品です。下着を勇之助に見られたらどうしよう、と買い物の間も気が気ではなかったあずき(と意外に冷静なお母さん)が、家に帰って洗濯物がちゃんと畳んであるのを見つけて、いよいよ絶望するという展開は、ある種お約束です。それがここまで見事にはまるのが、この作品の魅力でしょう。
ところで、ごく短い間に勇之助の両親にも的確な個性づけがされていたことにお気づきでしょうか。カッコイイ魅力いっぱいの父に、上流育ちで良い人柄だがちょっと生活力に欠ける母。この小笠原家と野山家という、大きく性格の異なる二つの家族がきちんと描かれたことは、後々の物語の下味として、重要な意味を持っています。 |
