この作品は「誰の」物語ではなく、「誰と誰の」物語…つまり、人と人のつながりを軸として視聴者に見てもらうことを、強く意識した作りになっています。もちろんゆずゆちゃんと結平が物語の軸、とは必ずしも言い切れないことに、この作品の危うさと魅力が同居しています。結平と心ちんというつながりだって魅力的です。
いや、書き方が違うだろう。ゆずゆちゃんと結平じゃなくて、結平とゆずゆちゃん。同様に、心ちんと結平に決まってるじゃないか。そんな見方もできます。結びつきのどちらに主眼を置くかで、この作品はまるで見方が変わってくるのです。
作品の制作スタッフは、ここに掲げた4通りの見方全てを満足できるような作品づくりを目指したのではないでしょうか。私はその意気込みを高く買います。でも、惜しいかな、あまりにも多くを限られた時間に詰め込もうと欲張りすぎた感があります。いや、ぎくしゃくした会話が延々と続く中では、つながりを維持するのが精一杯だったように見受けます。結果として、作品はもっとも大切にすべきもの、ゆずゆの幸せについては、十分に語ることができないまま終わってしまいました。
これは、この作品に対する見方としては極めて厳しい。でも、作品の本当のキーパーソンであるべきゆずゆの母が、ああいう形でしか登場できないというのは、作品として歪んでいるというのが私の率直な感想です。ゆずゆの真の幸せはママといっしょに暮らすことのはずなのに、ラストシーンに至っても何も進まないというのは、やっぱり悲しいのですよ。結平や心とどれだけ親しくなったか、ということはゆずゆにとって2番目の幸せにしか過ぎないのです。
(原作コミックがまだ完結していない中で、それを描けと言うのは酷な話かもしれません。でも、それを許してしまうと、原作付アニメーションの「甘え」を認めることになると、私は思うのです)