| 最終回…念のため確認すると、「けいおん」には、この「最終回(第12話に相当)」の後にさらに「番外編」が放送されていますが、ここでの最終回とは、もちろん第12話の方の最終回です。なんだかややこしい… えぇ、もう一度やりなおし。最終回のクライマックスシーン。放課後ティータイムが「ふわふわ時間(タイム)」の演奏を終え、舞台上で唯達はお互いの気持ちを確認し合っています。みんな満足げな表情。 そこに突然鳴り響くキーボードのコード進行。みんなが振り返ると、キーボードを鳴らす紬がいたずらっぽい表情で一瞬視線を上げ、先を促します。ジャンプアップをすぐに理解した律が大喜びでハイテンションなドラムを叩き始め、続いて澪が静かに熱くベースを鳴らします。この瞬間でも先輩方にちょっと遠慮していた梓もとうとうサイドギターを弾き始め、そして最後に唯が、ようやく全てを感じ取って、演奏を始めます。 お約束といえばお約束の、このジャンプアップシーン。アンコールでないところが実にすばらしいのですが、私も当然のように引き込まれてしまいました。番組を録画した翌朝、このシーンを幾度見直したか。いや、シーンというのは正しくない。私がひたすら見直したのは、キーボートから一瞬顔を上げる紬の表情、ただそれだけだったと言って過言ではありません。 この作品最大のクライマックスにおいて、文字通りステージの命運を分けたのは、これまで主要メンバーの中ではいちばん出番の少なかった、そして今回のステージでもいちばん目立たない存在だった、紬が演奏するキーボードなのです。 |
| このシーンを冷静に振り返ると、あの瞬間、ジャンプアップをするきっかけを作ることができるのは、実はキーボードしかいないことが分かります。このバンドの編成、「ふわふわ時間」の編曲、舞台上の状況(唯は演奏できたことだけで大満足!)、そして舞台上のキーボードの配置(斜めの位置でドラムと相対)…これだけの条件があって、誰も何も気づかないうちに、キーボードに大役が回っています。 あの場面の紬は頭のどこかで冷静に、自分の担当楽器が今置かれているこうした状況を把握していたと思います。でも、紬が最初の音を出そうとした瞬間、そんな考えではなく、「もっとみんなとこの瞬間を楽しみたい!」というシンプルな思いが、彼女の指先を支配したはずです。 だから彼女は、この場面の最初からは顔を上げていません。まず自分の音がちゃんと響いたということを確認して(ここは冷静)、やっぱり嬉しい!! という気持ちを彼女なりに爆発させてメンバーにアイコンタクトを取っています。この一瞬の紬の表情が、なんて輝いていること! 初めてこのカットを見た瞬間、私は思わず目頭が熱くなってしまいました。いや、今こうしてキーボードを叩いているだけでも、ウルウルしてしまう。自分の姿を冷静に見るとちょっと気持ち悪いのですが(笑)、音楽を楽しんでいる人なら、この場面の紬のパフォーマンスを見て、ジーンと来ない人はいないのではないでしょうか。 ここで、このキーボードを演奏しているのが紬という点に、私はこの作品の真の価値が見えるような気がしてならないのです。 |
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