| まず、基本的に1話2エピソード(時には3エピソード)という思い切った構成に、賛辞を惜しみません。 この小気味のよさが、僅か1クールの間にあれだけたくさんのテーマを同時進行で織り込みながらも、シリーズ全体を通しての見通しのよさを生み出したのは確かでしょう。また、それらと対象的に1話1エピソードをフルに生かした最終2話で、茜の生長と櫻田きょうだいの結束力、そして王家の威儀を示すことで、ややもすれば駆け足気味の進行をしっかりと纏め上げた点も見逃せないでしょう。 ヒロイン茜が「後ろに進むタイプ」のヒロインだったことは、制作サイドからするとずいぶんと物語を紡ぎにくい作品だったと想像します。そんな茜を、ほかのきょうだい全員、そして茜の友人、ファンクラブ会長(笑)、そして市井の人々までがさりげなく後ろから支え、茜を少しずつ前へと歩ませてゆきます。それをいくつものエピソードで文字通り一歩ずつ描いていったので、見る側も自然に感情移入できるようになります。 それが一気に花開くのが「熱烈峻厳! スカーレットブルーム!!(9話)」であり、後にそれを象徴する眼鏡を外すことで、彼女は大きな一歩を踏み出します(11話)。だけど茜は、そんな自分の大きな変化を「何だかちょっとだけ、変われた気がします(12話ラストカット)」と感じているに過ぎません。そこが一貫して変わらぬ彼女の魅力であり、この作品はそれをユーモアたっぷりに描き続けていました。 だけど、そんな茜が極度の人見知りなのには理由があり…といった感じで、作品では特に年長の王女様(葵、奏、茜、岬)にそれぞれ重いバックボーンがあり、それがこの4人の言動に色濃く反映されています。とりわけ、葵が背負う特殊能力(絶対遵守)によって、彼女自身がどれだけ思い悩んできたかは、われわれ凡人の想像を絶するものがあります。それでも公の場では第1王女として立ち振る舞う姿、そしてプライベートでは優しい姉として(一歩引きながら)きょうだいや友人を支える姿、さらには本当は今が変わらなければいいのに、と願うごく普通の高3という姿を、作品は事あるごとに丹念に拾い上げています。 そんな描写が続いたからこそ、最終話で「国王選挙を辞退します!」と頭を下げる葵に拍手で応える卯月さんたち国民の姿を見て、思わず目頭が熱くなってしまった自分に納得してしまいます。櫻田葵という一人の少女(あれだけ大人びていてまだ高3!)が、王族である前に一人の人間として尊敬に値することを、国民の皆さんはよく分かっていらっしゃる。それを私たちにも感じてもらえるよう、作品は葵メインのエピソードだけでなく、物語全体を通して最大限の努力を払っていました。それが心地よい。 葵だけでなく、奏や岬にも十分な配慮をして、彼女たちの生き様が十分共感を持てるように描かれていたのは、わずか1クール12話の作品としては見事な構成だと思います。個人的には、最も庶民に近い視点で悩んでいた岬に共感することしきりです(まぁ、普通の庶民が分裂なんてしませんが)。 |
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見事な構成といえば、普通の作品であればマスコット以上の役割を果たすことが少ない年少組の二人＝輝と栞＝に、ちゃんと物語上の重要なエピソードが当てられていたのには、ちょっとびっくりしました。3話Bパートはいかにも年少組らしい微笑ましいエピソード(初めてのおつかい)で、てっきりこれでお当番終了…と思っていたのですが、さにあらん。 7話では栞が「げんきになるおまじない」を見せて私たちの度肝を抜き、11話では輝が自分の役目をしっかり果たして茜の成長を支えます。そして12話、暴走する飛行船(!)が無事着水できたのは、何と言ってもこの2人の大活躍あってのことでしょう。とりわけ、栞に比べるとさらに目立たない役どころを担う輝が、しっかり作品の土台を作っているところは 、「バイファム」のマルロを思い起こさずにはいられない。 そう、私にとってこの作品は、当サイトでもメインで取り上げている「バイファム」と重ね合わせながら見る部分が多々ありました。両者の違う部分を取り上げたら幾らでもあります…9人の本物の兄弟と仮想家族の13人、王家一族という高貴な身分と戦場に孤立した子供たち、特殊能力と巨大ロボット(RV)、そして何より、二つの作品には30年以上という製作時期の違いが横たわっています。 一方で、特殊な環境の中で成長する子ども達の姿を生き生きと描くという一点で、この2作品は同じ肌触りを見せています。「バイファム」の頃はともかく、2015年のTVアニメを取り巻く環境において、それがどれだけ難しいことかは、言うまでもありません。それを極めて高いレベルで達成した制作サイドの努力に、私は心からの賛辞を贈ります。 |
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