| これら3人のメインキャラクターに共通するバックボーンが「死」という極めてシリアスな概念であることは、作品を特徴付ける重要なポイントでしょう。 一度も生ける者として接することなく母の死を迎えたアスミ。自分とは別人であるはずの死んで久しいまりかの人生までをも背負って生きて行かねばならないマリカ。宇宙に行くという自分の夢をついに果たせぬまま、死してなお地上に残るライオンさん。この3人に課せられた生と死のドラマは、私たち普通の人間が経験することのない重みを持っています。 とりわけマリカの出自の真相が彼女の生き方に与えた影響は、計り知れないものがあります。もし私が彼女と同じ立場であったなら、とても普通には生きていけないでしょう。繰り返しますが、彼女は「本当に強い子」だと思います。そんなマリカが、アスミ達の友情に支えられてもう一人のまりかの生と死を受け止めるという、彼女の人生の再生の物語が、この作品のもう一つの大きなテーマとなっています。 |
| そして、こうした「死」を抱えた3人が軸となって、これ以上ないほどの鮮やかな青春ドラマを織り成している事が、この作品の最大の特徴だといえるでしょう。死から想起される悲しみや暗さや影といった心象はそのまま残し、その上に今を生きる少年少女が放つ眩しいばかりの輝きを置くことで、私達はいつの間にか生と死という人間の究極の姿を見つめ、死の尊さと何よりも生のすばらしさを感じ取ることができます。 それらを表現するのにいささかの気取った部分も説教臭さもなく、ただアスミ達のジュブナイルストーリーの中に取り込まれる形でこうした真摯な主題が語り継がれてゆくという構成に、私は言い知れぬ魅力を感じます。暗い部分を強調することも隠すこともせず、ただじっくりと描きこむことで、明るい部分の素直な美しさをより際立たせることに、この作品は見事に成功していると感じます。 こういう作りのTVアニメ作品は、近年全くと言っていいほど見かけません。それゆえ、こんな語り口を知らない視聴者の方にとっては、鑑賞するうちに面食らう場面の方が多いかもしれません。でも、その魅力を知る者にとって、この作品の語り口は本当に心地よく感じられるものであることを、ぜひ知っておいていただきたいのです。 |
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