| これだけ楽しいエピソードが続くお話なら、それがこれからも続きます…というのが、現在の深夜枠テレビアニメの基本的なフィナーレです。ともすれば、時間の経過すらあいまいになってきます。極論すると、エピソードを積み重ねるために物語での時間が過ぎてゆきます。 ところが、「GJ部」では、時間の流れが作品の構成に大きな役割を果たしています。キャラクターの社会で一定の時間が経過したから、新しいエピソードが登場する/以前のエピソードが進化する、という風に物語が進みます。実際の世界を考えるとこちらの方が断然自然なのですが、こうした作りの作品はあまり多くありません。このため、しばらく見続けてようやく「GJ部」の時間の進み方を理解した時には、ずいぶん新鮮な印象を受けました。 一方、本編とは半ば独立して描かれた、俗にいうCパートの物語も独特でした。1話からずっと部室のこたつの前だけで物語が進むのですが、本編のエピソードと重ねつつも何かが少しずつずれていくな、という違和感をずっと感じ続けていました。冬を迎えた部室にこたつが登場し、そして2年目の夏が来てこたつがなくなっても、Cパートは相変わらずこたつの前で進んでいます。さすがにこれは何かあるはず、と思っていたのですが… 10話Cパートで部長が「先輩としての最後の役目だ」とさらりと言った瞬間、息をのんだ視聴者は多いでしょう。11話本編で描かれる2回目のバレンタイン、そして初めてBGMなしで描かれるCパートで、ようやく作品の仕掛けがクリアになった時、私はしばし呆然となっていました。 CパートはGJ部最後の活動の部室の風景をずっと描いてきたのです。特別な日であっても同じように部室に集う部員たちの姿を描くと同時に、各話のエピソードを丁寧に拾い続けることで、キョロ君とGJ部部員達の2年間がこの特別な日に集約されていく様子を、あたたかい視線で描き続けていたのでした。 これにはちょっと、いや、かなり驚きました。わずか1クール・12回の、しかも日常系のアニメで、本気でその特別な日を描くつもりなんだろうか。ちょっと毛色は違うけど、あの「けいおん!」シリーズにしたって、主人公が卒業するまで3クールかかったのですから、これは相当な冒険でしょう。私は最終話の予告編を見ながら複雑な期待感を持ったのをよく覚えています。 |
はたして最終話、アバンタイトルでの11話Cパートをリフレインする各シーンは、衝撃的でした。そして、浮かない顔でお肉を見つめる綺羅々、何よりも台所に立つ恵の表情に大きなショックを受けました。彼女はこれまでのCパートで台所に下がるたびにあんな表情をしていたのか、と思うだけで、もう居ても立ってもいられない! …いつの間にこんなにキャラクターに感情移入していたんだろう、という自分自身にも驚きましたが、ここまで大胆にこの一日を描こうとする演出の意気込みにも、また驚きを隠せませんでした。やがて最後のGJ部活動が終わり、部員は教室を去って部室の照明が消えます。そして翌日の早朝、無人の校門にかかる「卒業式」とだけ書かれた立看板を見て、思わず背筋が伸びました。 最終話本編では、これまでのCパート11話分をことさら強調しない分、かえってCパートの重み(あるいは軽さ)が強く感じられます。 紫音が自動販売機に挑戦して(自販機のルーレットが回りだしたのに驚いた紫音がキョロ君までぴょんと跳ねるシーンは、彼女の可愛さ全開で、個人的に大好きです)、綺羅々がグルーミングをおねだりして…と、卒業生はキョロ君との最後の時間を、いかにもGJ部らしいエピソードで過ごします。そしてそんな計らいをした部長は、キョロ君との時間を持たない、いや、持てない…恵が「don't ではなくて、can'tです」と京夜に告げるシーンの、なんと美しいこと! ここで京夜の顔を覗き込む恵みの表情は、思わず息をのんでしまった! あまりこまごまとエピソードの隙間を説明するのは、この作品には似つかわしくないので、これ以上は触れません。部長の思い、それを見守る恵の思い、そして紫音と綺羅々の思い、これらを受け取るキョロ君の思い、それらが淡く、だけどしっかりと絡み合いながら、GJ部員が最後の一日を過ごしている様子が、丁寧に描かれています。 学校としての卒業式のシークエンスは、袴姿で堂々と歩む卒業生3名の衣装が見どころでした。みんなお似合いなのですが、綺羅々の髪飾りには一本取られてしまった。そんな3名を見つめる京夜の複雑な表情も見逃せません。その表情は部室に戻ってきてからも変わらないのですが、恵の一言で、京夜は心のどこかにスイッチが入ります。その時が分かっていたように卒業生3名が部室にやって来て… |
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