| 第4巻の最終話(温泉に行くと言う彷徨たちについていった未夢＝「エピソードA」と呼びます)のラストシーン…月を見ながら、彷徨にありがとうとそっとつぶやく未夢、その同じ月を彷徨がじっと見つめている…や、第7巻冒頭のシリーズ(光ヶ丘登場!＝「エピソードB」と呼びます)のラストシーン…もっと言葉で伝えないと相手に伝わらないよ、と彷徨に文句を言う未夢に、手折った野の花を差し出す彷徨…といった場面は、その典型例でしょう。 エピソードAは、彷徨が未夢を気遣っていることを未夢が初めて理解する場面として、エピソードBは彷徨が未夢に対して初めて自分の気持ちを直接的に伝えた場面として、作品を通して極めて重要な位置を占めています。 当然、アニメ版においても、これらのエピソードは大きく取り上げられるのですが、その描き方を比べるとずいぶん雰囲気が違うように感じられます。実は両エピソードはそれぞれアニメ番第1シーズンと第2シーズンに分かれて放映されたのですが、各話とも二つのシーズンの演出手法の違いを象徴するような仕上がりになっています。 エピソードAに相当する第36話(平尾町温泉探検隊)は、第1シーズン終盤に放送された回ですが、この話は原作のコミックにかなり忠実に作られています。彷徨と三太の温泉話に未夢が強引に加わるところ。崖から落ちてしまった未夢が、助けにきた彷徨の思わぬやさしさに驚き、いつのまにか彼を意識している自分に気づくところ。彷徨が未夢の参加を認めた理由。森の中で夜を迎えても怖くないこと、そしてその理由に気づく未夢。西遠寺に帰って、満月を見ながら何かを思う二人。こうした、物語の骨格となる部分は、原作・アニメともほとんど同じ味わいを共有しているように感じます。 私なりにまとめると、これまで自分のことしか見えていなかった未夢が、彷徨のより広い思いに初めて気づき、彼に「ありがとう」と素直に思えるようになったこと。その過程を自然に描くことで、このエピソードは読者・視聴者に共感を得たのではないでしょうか。 一方エピソードBに相当する第40〜41話は、第2シーズン冒頭を飾る前後半2回にわたるエピソードとして登場しますが、これはコミックと同じ構成です。このエピソードが作品全体の大きな山場の一つであることは明らかなので、アニメ版でも大きく取り扱ったのでしょう。このうち前半の40話はアニメ版は原作とほぼ同じ進行をたどります。ところが、後半の41話になると、アニメ版は原作から微妙に物語を変化させます。 |
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