| 原作では彷徨のライバルとなる光ヶ丘はちょっと度が過ぎる手段で彷徨を陥れようと画策しますが、アニメ版での光ヶ丘はあくまでも悪意を持たないままに彷徨を窮地に追い込みます。この違いは、NHKが放送した作品だからという理由で概ねけりがつくので、実はさほど重要ではありません。 その後、原作ではワンニャーの活躍(?)で半ば偶然に光ヶ丘の悪事がばれてしまい、彷徨の疑惑は晴れます。未夢は、彷徨が光ヶ丘が主張するような冷たい人間ではないと信じたいものの、そこから一歩を踏み出せません。結局、彷徨が無実とわかる過程で、未夢は自分の光ヶ丘への好意が彷徨の言うとおり浅はかなものだったことを知り愕然とします。 一方アニメ版では、未夢が彷徨の無実の証拠を見つけ、みんなの前でそれを発表するという形で、彷徨の疑惑が晴れます。この部分では、未夢が彷徨のことを「信じている」という気持ちが、彷徨を疑惑から救うことになり、原作に比べてよりドラマティックな展開になっています。彼女自身は自分が彷徨のことをどう思っているかなんてことは全く意識していないのですが、視聴者の側にはいろいろと思うところがあるはずです。このあたりはアニメ版の方がより踏み込んだ描写だといえるでしょう。 ところが、エピローグ部分ではコミックとアニメの視点が逆転します。 原作では自分の気持ちを話さないのは性分だから仕方ないという彷徨に未夢は怒りを爆発させます。「そんなことだから誤解されるのよ。もっと言葉ではっきり言ってくれれば…」と言葉をつい荒げてしまう未夢。それだけ彼女は彷徨のことを心配していたのです(が、彼女はそのことをまだ意識していません)。 その瞬間、彷徨は道端に咲く花を手折って、無言で未夢の前に差し出します。突然の出来事に言葉が続かない未夢、顔を赤らめる彷徨、そしてようやく彷徨の行いの意味に気づく未夢…。うーん、お約束の展開をここまで堂々とやってもらえるとむしろ心地よいですね。それがちっとも不自然に感じられないのが、この作品が名作たる所以です。 とまれ、このエピソードを境に、二人の関係は急速に親密さを増していきます。まさに作品のターニングポイントといえるでしょう。 一方のアニメ版では、こうした二人の心の触れ合いは全くといっていいほど描かれません。「2年連続美少年チャンピオン」になった彷徨をからかう未夢、その様子を楽しむルゥたちといった、ほのぼのムードが続いたままこの回は終わってしまいます(光ヶ丘の登場はおまけです)。つまり、アニメ版ではラブコメディの「ラブ」の部分はほとんど描かれず、「コメディ」の部分が重視された描き方になっているのです。 |
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