| この微妙な主題の変化は、第2シーズンが進むにつれて顕著になっていきます。未夢たちがアメリカに向かうエピソード等はその典型です。ただ、同時にもう一つ新しいテーマがクローズアップされていくことにも、次第に私たちは気づきます。 それは先述した彷徨の誤解を解こうと活躍する未夢の描写からも既に窺われますが、未夢と彷徨、ルゥとワンニャー、そして時には友達との「絆」という視点が、次第に物語の中で大きく扱われるようになります。ただの寄せ集めだった彼らが次第に「家族」として心を通わせていく姿、あるいは通わせられないことに悩む姿を、アニメ版ではコメディの隠し味として積極的に用いるようになります。 もちろんこのテーマは原作でも描かれているのですが、それは二人の恋愛を補完するものとして登場します。アニメ版は「喧嘩するほど仲良しさん」といった具合に二人の仲を冷やかすことはあっても、それで二人の恋愛関係が進むということはほとんどありません。いくつかの例外を除くと、アニメ版での「恋愛」は「絆」の副産物として描かれていたように感じます。 |
| その集大成とも言えるのが最終回のエピソードです。 原作では、ついに共同生活が終わるという時になって、未夢はついに彷徨への「好き」という思いを告げようとしますが、いろいろ邪魔が入って(お約束!)それはかないません。友達の協力も得てルゥたちを無事両親の許に送り届けた後、未夢はもう一度勇気を振り絞って彷徨に語りかけますが、彷徨の方が一足先に「好きだよ」と未夢にキスして、恋愛物語もめでたくハッピーエンドを迎えます(かっこいい男の子に先に告白してもらうのは、女の子の憧れですよね、きっと)。このシーンこそがコミック最大のクライマックスであることは、言うまでもありません。 一方のアニメ版では、未夢の悩みは共同生活が終わるということの寂しさに限定されていて、彷徨に愛を告げられないというコミックにおける最大の仕掛けは全く描かれません。アニメ版でもルゥたちを帰還させるために友達の協力を得るのですが、原作のあっさりした描写とは異なり、アニメ版ではこの部分に十分な時間と手間をかけています。そして地上でルゥたちの帰還を見送る二人と友達…徹底して「絆」というテーマを描き続けていることが分かります。 |
| そしてルゥたちが戻っていった後、二人の間に「好き」という言葉をやり取りするシーンは、ついに描かれませんでした。短い終結部で、未夢とクラスメートたちは(彼方にルゥたちがいる)空を見つめますが、彼らは一様に「楽しかった」と振り返るだけです。それはルゥたちやみんなと楽しい時間を過ごせた、その絆を懐かしんでいるわけで、ここで第2シーズンの真のテーマがはっきりと再現されることになります。 やがてEDテーマが流れ始めると同時に、未夢と彷徨、そしてクラスメートとの別れが淡々と描かれていきます。そこにも「好き」という言葉は現れない。未夢は新しい中学校での生活を始め、彷徨もまた以前の生活に戻り…。 |
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