| ◆ルゥ君とデパートで(第25話) 未夢・彷徨とルゥはデパートへ買い物にお出かけ。でも、いつになく甘えん坊のルゥを二人はちょっと持て余しぎみです。周囲を気にした二人の何気ない態度がルゥの心を傷つけてしまい、怒ったルゥは二人の顔を超能力でくっつけてしまった…! コミック・アニメを問わず、このお話を作品のベストエピソードに上げる方が多いと思います。実際、この回はアニメ版スタッフが全力を傾けたエピソードです。 原作ではこれに相当するエピソードを前後半2回に分けて連載していますが、アニメではそれを1話分に集約しています。その結果としてエピソードの内容が飛躍的に濃密になっているのですが、それが決してくどくなく、私たちが気軽に楽しめる形で物語が進行しています。その巧みな演出がこの回のポイントでしょう。 原作ではルゥが堪忍袋の尾を切るのが「(未夢の)おっぱい」になっていますが、さすがにアニメ版(＝NHK)では自主規制をかけて、その直前の「パパ・ママじゃない」がきっかけとなります。もっとも、こちらの方がより広い視聴者に受け入れられやすく、上手い切り替えだと思います。 そして怒ったルゥによって未夢と彷徨はほっぺたがくっついてしまうのですが、ここからの各シーンはアニメならではの動くという楽しさが満載で、見飽きることがありません。そのさなか、彷徨は冷静に3人の行動を振り返ってみようと提案するのですが、この場面は原作のややぶっきらぼうな態度に比べて明らかに＋αの感覚が伴なっていて、アニメ版ならではの描写だと感じます。 |
| ここから彷徨・未夢+ルゥの小さな旅が始まるのですが、この一連のシークエンスでは番組でおそらく唯一挿入歌(「タカラモノ」)がBGMに流れます。誓っても決して上手とはいえない歌唱なのですが(失礼)、そのちょっとたどたどしい歌声で綴られる歌詞が、各シーンの情景と見事な連携を見せていて、この場面を見ていた私は思わず息を飲みました。 すぐ隣にいるごく普通の家族の、ささやかだけどとても幸せあふれる光景をじっと見つめるルゥを見守る、彷徨や未夢の視線の変化を、お約束とは思いながらもつい感情移入して見てしまいます。それを台詞無しで、BGMに全てを託して描いたところが心憎い演出です。 こうして時間が過ぎ、未夢が改めて私たちの思いを代弁してくれるのが心地よい。未夢は自分の思いを伝えようと懸命に話すのですが、上手く表現できずもどかしさが募ります。そんな未夢の思いを汲んで、彷徨が3人の気持ちを巧みに切り取り、私達に示してくれます。私はこのシーンに、この作品の優しさを見る思いがします。 この回は、こうしたシリアスタッチの場面とコメディの場面のバランスが絶妙だったのも印象深いです。基本に忠実な演出ではありますが、緩急を生かした物語進行のテンポ感も、このエピソードを優れたものに仕立てていると思います。 |
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