| さて、この27〜33話の「ジルバ編」とでもいうシリーズにおいて、私は子供たちの中でもとりわけハワードとシャアラの動きに着目していました。この二人が、真の意味でこの厳しい世界を生き抜く資格を得たのが、このシリーズだったように感じたからです。 ハワードはトラブルメーカーの本領を発揮して他の子供達を窮地に陥れますが、その子供たちに助けられ、トイレ掃除1週間と引き換えに無罪放免となります。ベッドに横たわったままの彼は、おそらく生まれて初めて、他人の前に自分の弱さをさらけ出します(29話)。それは、ハワードには素敵な仲間がいることを、彼自身がようやく気づいた瞬間でした。 シャアラは、子供達の中でもっとも非生産的な少女(それを非難するつもりはありません)でしたが、それでも少しずつ生きてゆくための力を身につけてゆきます。それでも彼女は基本的には誰かに助けてもらう側。だけど、脱獄囚らがオリオン号に侵入し、カオルたちが倒されようとする最後の瞬間、シャアラは意を決してロボットを操り、大男ボブに立ち向かいます(33話)。オリオン号を失うという多大な犠牲を払ったものの、シャアラは自らの勇気で初めて他の仲間を救ったのでした。 |
| こうして大きな成長を遂げたはずの二人ですが、生来の行動パターンがすぐにがらりと変わるわけではありません。とりわけハワードは相変わらずちょっと鼻持ちならない面を事ある毎に見せてくれます。 ハワードのそんな態度とシャアラのメルヘン少女ぶりが最悪の結果を生んだのが、43話前半のエピソードです。でも、それがよくないことを二人とも感づいています。私たちはそこに二人の成長を見て取ることができます。 しかし、異星の自然はいつも唐突に過酷な試練を子供たちに与えます。機器の不調で砂漠に着地した帆船オリオン号は、そのまま巨大な流砂に捕らえられてしまいます。急いでオリオン号から脱出を試みる子供たちですが、バランスを崩したシャアラは一人船に取り残されてしまいます。 緊急事態に驚く子供たち。この時、シャアラを助けようと真っ先に流砂に沈みゆくオリオン号に取りついたのは、あのハワードでした。 ここからの数シーン、私は録画を何回観たことでしょう。渾身の作画で普段より数倍すてきなシャアラにも驚きますが(笑)、それ以上にハワードの痛々しいほどの決意が、私の心を締め付けました。「いっしょにコロニーに帰るんだ!!」というハワードの台詞は、同じ43話前半のシャアラからハワードへの謝罪の言葉でもありますが、この極限の状況でハワードが叫ぶことで、私達はこの台詞が今回のサブタイトルである理由を改めて思い知らされます(個人的には「バイファム13」13話のスコットの台詞に繋がるものがあり、興味深いのですが、それは他の機会に)。それに「うん」と答えるシャアラの瞳の何と澄んでいること! ハワード、がんばって!! 女の子にあんな顔をされてうまく事を運べなかったら、お前は男じゃない!!! ---だけど、自然は冷徹です。子供たちの見守る前で、ハワードとシャアラは流砂に飲み込まれてしまいます。あのラストシーンを観て絶句したのは、私だけではないでしょう。スタッフは、私が考えていたより遥かに「本気」なのです。 だけどだけど、私は次回予告を見てちょっぴり安心していました。「ハワードが助けてくれた」というサブタイトルは、きっとシャアラが話してくれるはず。ハワードにはしっかり生きていてほしいけど、とりあえず作品は順当な着地点を目指してくれそう。…そう、私は自分で気づかないうちに、この作品に安らかな予定調和を期待していたのでした。 |
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